13日、マレーシアのクアラルンプール国際空港で2人の女性によって毒殺された、故金正日総書記の長男にして金正恩委員長の実兄である金正男氏。
韓国当局は、彼が死に至った薬物が猛毒のVXガスである可能性が出てきたとの見解を示した。
VXは現存する軍事用の化学兵器の中で最も毒性が強いとされている薬品であり、皮膚から吸収するとごく少量でもけいれん、瞳孔の収縮などが起きるもので、神経伝達機能を阻害することで死に至らしめる非常に危険なものだ。
体内に駐車すると効果が早く、揮発性もないので周囲の人に影響を及ぼすことも少ないため、ターゲットに狙いを定めることが出来ることもあり、北朝鮮工作員は暗殺にVXを使うことが多いとされている。
今回の暗殺では針で注入したケースと、スプレーで噴霧したケースの二つが出ているが、現状では後者の可能性が高いという。スプレーなどで噴霧すると、呼吸と共にVXガスを吸い込むことになるという。
さて、日本でもこの危険なVXが用いられ人が殺傷された事件が過去に起きていた。地下鉄サリン事件を引き起こしたオウム真理教によるVX殺人事件である。94年7月頃、プラントにてサリンを生成していたオウム真理教はその流れでVXも生成、「神通力」「神通」と命名されていた。なお、作製は麻原が土谷正美に命じて行っていたという。そして94年から95年にかけて、オウム真理教に逆らう人々らをVX溶液で襲い殺傷している。その中には「オウム真理教被害者の会」の永岡弘行会長もいた。
さて、オウム真理教はかねてより北朝鮮と関係が深いとされていた。オウム真理教は武装化の究極的な目標として核開発も視野に入れており、信者の多かったロシア経由で北朝鮮とコンタクトを取っていた。その頃オウム真理教には多額の資金援助も行われており、北朝鮮から世界に出回った「偽ドル」の動向と一致する所があるのだという。
だが、オウム真理教と北朝鮮の関係はあくまで疑惑の段階でしかない。その大部分は今もなお闇に包まれたままなのである。
(田中尚 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)