大森・座敷女、京都河原町のジュリーは大金持ち

 「座敷女」とは漫画家・望月峯太郎のコミック・講談社のタイトルであり、その主要キャラの名前である。長い髪を振り乱し、男をつけ回し、最後に殺してしまうという女ストーカーの事である。
 ストーカーというと、どうしても男、特に秋葉原の某喫茶店にたむろしているようなオタク系のやばいヤツを連想してしまうが、女でもストーカーはいるらしい。この漫画「座敷女」にあるようなやばい女は現実に存在するようだ。

 十何年か前に噂になっていたのが、「大森の座敷女」である。漫画の風貌そっくりで化粧気の無い顔、不自然に長い髪、薄汚い服、そして紙袋。そんな怪人物が大森を徘徊しているのだ。一説によると、蒲田から移動してきたとも言われており、2001年以降は大森を拠点としていたようだ。実際この人物は何で生計を立てているのか不明だが、パチプロで生活している(めちゃくちゃ強いという説あり)とも、実は大金持ちだとも言われている。




 この一見、裕福に見えない人物が大金持ちという都市伝説は、京都「河原町のジュリー」にも通じるところがある。怪奇本書評家・逸匠冥帝氏の情報提供によると、この鴨川にかかる三条大橋の下をねぐらにしていたレゲエ「ジュリー」は、河原町では名物的な存在となっていた。ふけと汚れでバリバリの髪、よれよれの服、ジュリーは町の一部と化していたという。
 それにしても「ジュリー」という名前は傑作である。京都育ちのスーパースター・沢田研二の「ジュリー」にあやかったのであろうか。しかし、両者でかぶってるのは、ロン毛と京都育ちというだけだが…(笑)

 80年代の前半の事、ジュリーは凍死してしまうのだが、それにはこのよう噂が付随していた。府の役人が保健所につれていき、ジュリーの延びた髪の毛や髭を散髪してしまったため、保温がきかずジュリーは死亡したというものであった。まあ、たかが髪の毛を切ったぐらいで生死を分けるとは思えないが、役人に対する反発、自由人ジュリーへの共感がこの噂を呼んだのであろう。
 この「河原町のジュリー」にも金持ち伝説があった。
 「ジュリーは実は金持ち」
 「ジュリーは貯金が一億円ある」
他愛のない噂であったが、なんとこれは事実であった死後、ジュリーの実家が資産家であったと新聞報道がされたのである。

この「一見ホームレスだが、実は金持ち」という噂はいつごろからあるのであろうか。
 福岡では天神、博多、香椎、大橋などにホームレスの姿がよく目撃されるのだが、そのホームレスの後をつけると豪邸に入っていったという噂があるらしい。筆者の生まれ故郷の徳島でも同様の噂があった。
 新町という場所で、筆者が遊んでいるとホームレスがいたのでお金をあげようとすると、当時中学生であった5歳年上の従姉妹が
 「あの人は実は金持ちなんよ」
と言って止められた記憶がある。
 また友人からは、片足が不自由なはずの戦傷軍人のホームレスをからかったら、両足で全速力で走ってきたという噂も聞いた。これらの噂の根底には、日本古来から伝わる貴種流離譚の影響があるのかもしれない。これは民俗学者の折口信夫らが展開した概念で、元々高貴な生まれの者がゆえあって極貧の境遇に陥っており、いづれもとの裕福な生活に帰還していく説話をさしている。




 このように、一見、貧しげな人々の中に富貴を垣間見るのは、「ものぐさ太郎」や「三年寝太郎」などとも通じるのであろうか。元々日本人は太閤・豊臣秀吉という(農民関白)に大いに夢を見たり、小学校しか出ていない田中角栄を(今太閤)をもてはやしたりするのが好きである。であるからして、貧しき人々の中に富貴の片鱗をみるのである。
 兎に角、噂を奏でる人々は「王子と乞食」的逆転劇を期待してしまうものかもしれない。

(山口敏太郎 ミステリーニュースステーション・アトラス編集部)

※画像©写真素材足成

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