都市伝説の中で語られる怪人は多い。いづれも周囲の人から親しまれている畸人(きじん)・怪人が多く、名物キャラであるが故、都市伝説化したといえる。だが、中には実在のモデルが限定される可能性が高く、いつしか意識的にメデイアから消されていく怪人・畸人キャラもいる。
その代表的な例として「にゃあにゃあ姉さん」である。市川伝承民話という千葉県市川市の民話の団体が発行している小冊子に掲載された怪人である。
当時、生徒達(中学生?)の雑談記事の中に出てくる怪人物でJR本八幡駅周辺などに現れ、学生達が買い食いしている肉まんなどを奪いとって食べてしまうらしい。しかも、その動きや仕草は猫そのものであり、「にゃあにゃあ姉さん」という名前の由来となったのだ。
このキャラクターのインパクトは凄かった。
(いったい何者?)と噂が本八幡周辺で広がったものの、突如図書館の資料などから「にゃあにゃあ姉さん」の記事が削除されてしまったのだ。この削除という事実が、逆に噂の幅を広げてしまった。
(にゃあにゃあ姉さんは、いじめられっこだった。いじめっこにいじめられた子が猫の真似をしている様子が怪人と誤解された)
(にゃあにゃあ姉さんは お笑い芸人で街角でコントの練習をやっていた)
(にゃあにゃあ姉さんは、実在のモデルがいる。他人の食べ物がたまらなく欲しくなる女の子で、実在の人なので記事が削除された)
など、諸説が唱えられ、にゃあにゃあ姉さんの謎は深まっていった。
他にも「猫人間」の目撃事例はある。『本当にある「怖い場所」案内(笠倉出版』によると、1984年岡山県岡山市で、夜間タバコを自販機で購入途中の男性によって目撃された怪物だという。身長140cm程度の猫の顔をした人間で、背広を着た三毛猫であったらしい。4人組でちゃんと二足歩行していたというのが興味深い。ちなみに筆者は、同社の編集担当と付き合いがあり、同都市伝説の出所を確認したが、編集プロダクションが集めた独自ネタという事で追跡はできなかった。
どちらにしろ、猫の顔をした人間がいるというモチーフの噂が古くからある。「化物一代記」伊庭可笑・作 鳥居清長・画など黄表紙にも「化猫遊女」という妖怪が出てくる。これは当時、品川の遊女が化け猫だったという噂が実際にたった事に由来する。夜中に「化猫遊女」が海老や人間の腕をかじっていたという話がもっともらしく語られたのだ。これなども「化け猫都市伝説」のルーツとしては興味深い。
(山口敏太郎 ミステリーニュースステーション・アトラス編集部)
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