伊勢神宮の外宮(豊受大神宮)には豊受大神という食物や穀物を司る神が祀られている。豊受大神は元々丹波国(現在の京都府中 部と兵庫県北西部の一部)の神であったのだが、雄略天皇統治のころ、雄略天皇の夢枕に天照大神が立ってある神託を受け取った。それは、「自分一人では落ち着いて食事が取れないので、豊受大神を近くに呼び寄せなさい」というものであった。それを聞いた雄略天皇はすぐに豊受大神の社を伊勢に遷宮させて皇大神宮の近くに置いたのだという。それ以来、豊受大神宮は天照大神に付き従うかのように鎮座している。
そのような歴史を持つからか、伊勢神宮のしきたりとして、内宮と外宮の両宮を参拝する際は、外宮から先に参拝してから、内宮を参拝しなければならないという。
豊受大神宮はあくまでも、天照大神に付き従うかのように、主君を立てるような静かな雰囲気を醸し出している。初夏には花菖蒲が咲き乱れる勾玉池や平清盛が勅使として参拝した時に、彼の冠に枝が触れたと言われている清盛楠もそのような空気を作り出す一つの要因となっているのだろう。
近代の日本は華やかさが美と考えがちであるが、昨今は大和撫子や良妻賢母、内助の功が密やかに注目されている今、静かな美を思い出させるにはうってつけの場所であろう。また、心に平穏を取り戻したい人にとっても非常に良い場所であると言える。
(監修:山口敏太郎/田中尚 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)