いよいよ2016年のあと残すところ一週間を切った。忘年会では1次会から2次会へと、ついいつもより羽目を外し、終電を逃して止む無くタクシーで帰宅する御仁も多いのではないだろうか。
さて、以下は、筆者・山口敏太郎のサイトに寄せられた体験談である・・・。
私は残業でいつも遅くなるとタクシーで帰ることにしている。(おっと、ちょうどいい、具合にタクシーがいるじゃんか)
深夜2時頃、その日もタクシーを拾った。そして…、乗り込んだ。いつもは、駅前までいかないと拾えない。だが、会社のビル前で拾えたのはラッキーであった。
私の自宅は千葉県でも有名な墓地の近くにある。都心からこの時間だと一時間半もあれば充分だろう。
「○○墓地付近まで行ってくれ」
私がそう告げると、その瞬間タクシードライバーの顔が恐怖で曇った。
「えええ、○○墓地って」
まるで何かに怯えているみたいだ。私が声をかけた。
「おい どうしたんだい運転手さん」
「いやっ、すいません。行き先が○○墓地の近くだったもんで…、てっきり幽霊かと、はぁ」
「おいおい勘弁してくれよ」
私は苦笑いしてしまった。いくら深夜まで働いている私でも幽霊に間違えられるなんて…。
「実は、最近幽霊の噂が多くて…」
どうやら運転手の話によると、最近○○墓地まで行ってくれという幽霊が度々出ているらしいのだ。
「それは、くだらん噂話だよ」
私と運転手さんはすっかり意気投合し、深夜のドライブを楽しんだ。私の自宅までたどりついた時、なんと我が社のタクシーチケットが使えない事がわかった。
「あれ? 使えないんですか」
私の問いに恐縮する運転手。
「すいません、現金だけなもんで」
やたらと、腰が低い。
「すまん。ちょっと、待っててくれ」
私は自宅に入り、現金を持ってくるとドライバーに渡した。
「これで、いいかい?」
「いや、助かります」
ドライバーは私に領収書を渡すと、車を発進させた。すると、瞬間に闇の中へと消えてしまったのである。
「うわあああっ」
私は悲鳴をあげた。忽然と目の前から消失したのである。私は愕然とした。
(あの運転手こそが・・・)今まで一緒にいた運転手自身が幽霊だったのであろうか。なんと、領主書の日付を見ると昭和の年号であった。
その夜以来、寂しいビル街ではタクシーは拾わないようにしている。それにしても、あのタクシーは今もどこかを走っているのだろうか。
(聞き手:山口敏太郎 ミステリーニュースステーション・アトラス編集部)
※画像はイメージ写真