※本コラムはゲーム作品「妖怪ウォッチ1~3」をアカデミックに解析し元ネタの特定ほか妖怪伝承について解説していくコーナーです。
とりついた人を不用心にしてしまう「ぶようじん坊」は、ふんどし一丁にお鍋をかぶっただけの不用心な姿ででてくる。手持ちの武器もつまようじのヤリと、妖怪にしては非常に頼りない外見だろう。しかし、ぶようじん坊ソックリの妖怪の絵が残されているのだ。
室町時代に描かれた「百鬼夜行絵巻」(京都真珠庵蔵)。様々な妖怪が街をねり歩く、百鬼夜行を描いた絵巻の中で一番有名なものだ。この中ほどに、大きな赤鬼によって壊された箱から封印されていた妖怪達が出てくるシーンがある。ここに大きな鍋をかぶった妖怪がいるのだ。
顔はわからないが、黒い着物を着て大きな天秤棒をかついでいる。棒にはおたまやすりこぎなどの料理道具がくくりつけられているので、この妖怪の仕事道具なのかもしれない。
ゲーム序盤で出てくる「ぶようじん坊」はもちろん、この鍋妖怪もそんなに強そうには見えない。しかし「ぶようじん坊」は進化するとお鍋のかぶとを捨てて「がらあきん坊」となり、無謀な所は変わらないが「ちょっとの傷では動じないたくましい戦士」へと姿を変える。
「百鬼夜行絵巻」の先頭にも槍のような形をした大幣(お祓いの道具)を持って突っ込む赤い妖怪の姿がある。これも何かの妖怪がかぶとを脱いで、切り込めるほど成長した姿なのかも知れない。
(黒松三太夫 ミステリーニュースステーションATLAS編集部 寄稿・ミステリーニュースステーションATLAS)