「デスノート」少年ジャンプに掲載され、アニメ化や映画化され一躍人気漫画になったヒット作品である。
死神が持つノートには、名前が記載されるだけでその者は死を迎えるという。このノートを巡って激しい争奪戦と緻密な心理戦が展開される。ノートを使って新しい世界を創ろうとするライト、その犯罪を阻止しようとする天才的な頭脳を持つL。この両者の攻防は見るものを狂喜させた。
2006年6月には、映画「デスノート・前編」が公開され、興行収入が28億円を記録し、邦画としてはヒットとなった。更に、金子修介監督による映画版の後編「デスノート the Last name」が11月3日に公開された。この「デスノート旋風」日本だけに留まらず、香港、台湾でも圧倒的に支持されていており、世界中がこの漫画に夢中になったのだ。2008年には、「デスノート」の外伝的作品である映画『L change the WorLd』が公開された。これに伴い「デスノート」の完結から、3年後の世界を描いた短編作品が少年ジャンプに掲載された。
だが、死神を扱った作品だからであろうか。このデスノートには不気味な噂が飛び交っている。この「デスノート」関係者に、次々と不幸やアクシデントが巻き起こっているのだ。芸能界や出版業界では「デスノートの呪い」と呼ばれ、次は誰に飛び火するのか、関係者たちは恐怖に打ち震えた。
まず、実写版である映画篇において、死神・リュークの声優に起用された歌舞伎界の個性派俳優の中村獅童の一連のトラブルである。2006年7月に酒気帯び運転が発覚し、反省したものの、すぐさま、信号無視で警察に検挙され顰蹙をかった。その後、飲み屋で泥酔する姿などが報道され、ファンや身内から不評をかってしまった。結果的に、出演していたCMやドラマを次々と降板、映画での競演がきっかけで結婚した妻で女優の竹内結子との別居、離婚という事態まで追い込まれた。もはや、死神役を演じるどころか、自らが死神に取り憑かれてしまったといえよう。
さらに、2006年9月6日漫画の作画を担当している漫画家の小畑健氏が、刃渡り8.6センチの十徳ナイフ(一部の情報では、軍隊使用のスイスアーミーナイフとも言われている。スイスアーミーナイフが日本の十徳ナイフなのだろうか)を、目的も無く所持していた疑いで、銃刀法違反の現行犯で逮捕されるという事態が起こった。なお、この事件を同じ作家として弁護させてもらうと、漫画家という仕事がら、資料を切ったり、スクリーントーンを切り出す上で刃物は使用することが多い。最も、十徳ナイフはやり過ぎだったかもしれないが…。
しかし、これで不幸の連鎖は終わらなかった。さらに翌日、映画「デスノート・前編」の撮影監督だった高瀬比呂志氏が脳梗塞のため、50歳という若さで急死したのである。ここまで不幸の連鎖が続くと偶然の一致の一言では済ませないほど、不気味である。これに至って、「デスノート」の呪い伝説が、ささやかれ始めたのだが、映画の宣伝担当者は、「まったくの偶然です。スタッフ、出演者一同、特に意識はしていません」と表面上とコメントしている。(宣伝担当者のコメントは、ニュースサイトZAKZAKAの2006年9月21日の配信記事(http://www.zakzak.co.jp/gei/2006_09/g2006092112.htmlから引用)
こうして「デスノート」の呪いの連鎖は、都市伝説マニアの間で2006年の大きな話題となった。だが、強運の持ち主はいるものである幸い主演でライトを演じた藤原竜也には、呪い及んでいない。彼は演劇関係者の間で鬼門と呼ばれる四谷怪談(藤原竜也は「大正四谷怪談」に出演した)を演じたが、特に祟りも受けておらず、呪いを跳ね返す強運の持ち主といえる。そういう意味では、夜月ライト役ははまり役だったかもしれない。初日の公開日、藤原は「俳優、スタッフにいろいろありましたが、力を合わせて最高の終わりを迎えられました」と余裕のコメントを出している。
(後編に続く)