呪術

【暗闇の日本史】「平家の呪い」は存在するのか?

 日本史上、連綿と続くのが「平家の呪い都市伝説」である。




 つまり、平家に触れるものは不幸になる?!という噂があるのだ。何故、源氏に比べて平家に関わるものに不幸が訪れるのであろうか。

 これは筆者のあくまで推論に過ぎないが、平家は源氏に比べて常に陰陽の陰を演じてきた。源義経や源義家、源義家など煌びやかなスターを多数輩出している源氏は陰陽の陽であり、不幸で自堕落なイメージの強い平家は陰であり、源平で陰陽を形成しているのだ。

 また、両者は尽く対立概念であり、源氏が光なら、平家は闇、源が山ならば、平家は海である。義経が鞍馬山で習った兵法で海の平家を打ち破ったのは象徴的な出来事なのだ。

 これは物語にも見ることが出来る。有名な「源氏物語」と「平家物語」を比較すると、物語の時代背景は違うが、ストーリーでも対照的である。恋模様華やかな源氏物語に比べ、平家物語は滅亡の哀愁を描いているのだ。

 よくよく考えてみると、平家物語そのものが、日本という国に向けられた呪いのシステムのようにも考えられる。”諸行無常の響きあり”という文言で始まるあの物語は、平家の無念と源氏に対する恨みを語る呪いの物語であったのだ。その証拠に、平家物語の劔巻に登場する「宇治の橋姫」は、丑の刻参りのルーツになっている。




 しかも、平家物語の中は妖怪だらけであることに気がつくだろう。サルの顔、タヌキの胴体、トラの手足、尾はヘビというキメラ妖怪の『鵺(ぬえ)』や、三井寺の僧・頼豪が変化した『頼豪鼠』、福原の都で清盛を睨んだ『目競べ』などが代表例である。まさに魔物だらけの物語といえる。

 平家の隆盛を作り上げ、唯一の開運キャラであるはずの平清盛自身も最後は全身が熱病で犯され死んでいく。その最後は悲惨であり、熱を冷ますためにかけた水が忽ち熱湯になったとか、一説には滅ぼした政敵達の呪いとも、その当時から噂されていた。

 結果、非業の最期を遂げた清盛と、源平合戦で死んだ平家の怨念が、この国を呪い続け、源氏にも悪影響を与えている。頼朝に睨まれ、西国に船で逃れるべく大阪湾に出た義経は“平家の怨霊たち”に襲われ、その兄・頼朝も落馬という不可解な死を迎えている。

 壇ノ浦で海の藻屑となった平家の怨霊たちは強烈な呪いをこの国に残し、平家物語という呪いの言霊集は琵琶法師というネットワークを使って、その恨みを日本中に、拡散していったのだ。

(山口敏太郎 ミステリーニュースステーション・アトラス編集部)

平家物語