※本コラムはゲーム作品「妖怪ウォッチ1~3」をアカデミックに解析し元ネタの特定ほか妖怪伝承について解説していくコーナーです。
妖怪ウォッチ2にて元祖軍の大将として登場する土蜘蛛。大辞典にある通り、「平安時代にも登場するゆいしょ正しい伝統妖怪」だ。
ゲーム中では必殺技のカットで背後に本来の蜘蛛の姿が現れるが、本来の土蜘蛛の姿は瀬節足動物の蜘蛛に、虎や鬼に似た顔がついているという、はるかに恐ろしいものである。
有名なものが『土蜘蛛草子絵巻』等で知られる源頼光の土蜘蛛退治にまつわる伝説だ。
現代も残る絵巻物によれば、源頼光が家臣の渡辺綱をつれて教徒の蓮台野に行った所、空を飛んでいく髑髏を発見。後をつけていくと、古びた屋敷に辿り着いた。
そこには様々な妖怪と一人の美女がいたが、怯まず斬りかかると女性は消え、後に白い血の跡が点々と山奥の洞窟まで続いていた。
洞窟の中には巨大な蜘蛛がおり、頼光がとどめを刺して首をはねると、切り口から1990個もの髑髏が出てきた。彼らが倒したのは人食いの大蜘蛛だった……という話である。
また『平家物語』では同じ土蜘蛛の話として、病気になった源頼光の前に身長が7尺もある大柄な僧侶の姿で現れ、縄のような糸を放って絡め取ろうとしたが、頼光が刀で斬りつけると逃げ去った。
この話も朝になって血痕をたどっていくと怪我をした大蜘蛛がいる所に辿り着き、退治するのである。
この土蜘蛛の伝説は非常に有名なものだったため、昔から伝統芸能の能や歌舞伎の演目になった。悪役である土蜘蛛役の人は、誰よりも目立つ派手な格好をして立ち回りをする。
妖怪ウォッチの土蜘蛛の姿は、この歌舞伎の土蜘蛛の姿から来ていると考えられるのだ。
(黒松三太夫 ミステリーニュースステーションATLAS編集部 寄稿・ミステリーニュースステーションATLAS)