Rくんというグルメマニアが、実際に体験した話である。
Rくんは、大の肉まん好きで、いろいろなメーカーや中華飯店の肉まんを食べ歩くのを趣味としていた。日本国内の肉まんのうまい店と言われたところは、全て食べ歩き、その数は100社に及ぶという。いささか、病的な肉マンマニアである。
(俺ほど肉まんに愛情を込めて生きている奴はいない。なにしろ、俺は愛らしい肉まんを心から愛しているからだ)
Rくんは、よく肉まんへの熱い気持ちを語った。
また彼は、比較的細かい性格で、各メーカー、お店ごとに量が味付け、具の種類まで詳細なデータをつけており、そのノートは肉まん界のえんま帳と化していた。
(俺のつけているデータほど、正確で完璧なものはない。これは誰にも見せないし、渡さない。これは俺の宝だ)
しかし、気持ちが高じると、やはり本場に味見に行きたくなるのも心情である。
ある時、その気持ちが押さえきれなくなり、とうとう中国本土まで肉まんを食べに行くことになった。肉まんの本場に殴り込みと言ったところであろうか。
(絶対、日本で食べた肉まんより旨い究極の肉まんが、この広い中国にあるはずだ。そんな隠れた名店を自分の足で探してやる)
Rくんは、足を棒にして、聞き込みを行い、北京のいくつかの店で試食した。だが、どうしても日本の肉まんより旨いと言えるものはない。
(もはや、肉まん界において、日本の肉まんが、本場中国の肉まんを凌駕してしまったのか。もはや諦めて日本に帰るか?!)
そう思いながら過ごしていたが、北京で食通と自称する中国人に「究極の肉まん」の話を聞いた。
「何しろ、大変旨い。あの店の肉まんときたら、一度食べたら夢に出るぐらいだ。おまえも日本から来たかいがあるぞ」
噂半分にしても、一度食べたものは癖になり、毎月食べない我慢できなるぐらい旨いらしい。しかも、その店の肉まんは数百年の歴史があり、その地元でも何代にも渡って食される評判の肉まんであるという。
更に、肉まんには幸運の噂さえたっていた。
『その肉まんを、女性が食べると子宝に恵まれる』『その肉まんを、男性が食べると出世する』…
と言われていたのだ。
(ふふっ、そうだとしたら 俺にも運が向いてきたというわけか)
Rくんはバスを乗り継ぎ、ようやく、その某市の肉まん店を探し当てた。
「よし、ついに究極の肉まんを見つけたぞ!!」
Rくんははやる心を抑える事ができなかった。店も昼前だったが、大盛況であった。ようやく席につき、当然肉まんを注文し、その到着を待った。
そして、運ばれてきた肉まんを食べたRくんは、あまりの旨さに仰天した。
「うまい、なんだこの味は、まろやかでこくがある。それでいて歯ごたえがあり、風味も最高の肉まんだ」
今まで食ってきたどの肉まんより旨い。Rくんは強く確信した。
「それにしても、この具の中身はなんだ?!まったく想像がつかない。いったい何の材料につかっているんだろう」
「この肉まんの中身がぜひ知りたい。レシピを教えてもらえないだろうか」
Rくんは、熱心にお店と交渉したが、拉致があかなかった。困り果てたRくんは夜のその店の閉店後、中からでてきた従業員にお金を渡し、厨房をみせてくれと懇願した。
「たっ頼む、見せるだけでいいだよ。わざわざ究極の肉まんを探すため、遠い日本から遥々来たんだ。そこをなんとか」
「わっ、わかりましたよ。とにかく、見るだけですよ。それに、わっ、私が見せたとか、他言しないでくださいよ」
従業員は渋々、裏口からRくんを厨房内に入れ、中身を公開した。
「おおっ、これが、究極の肉まんを生む厨房か」
Rくんは夢中になって調べたという。しかし、どうしても肉まんの具材がわからない。
「具の中身はどこにあるんだ」
従業員は冷蔵庫を指差しした。
Rくんが興奮気味にあけるとそこには、堕胎されバラバラになった胎児が10数体入っていた。
(ミステリーニュースステーション・アトラス編集部)