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キックボクサー沢村忠の半生を描く「キックの鬼」 声優が抜擢された驚きの理由

『キックの鬼』は、1969年から1971年まで「少年画報」で連載されていた梶原一騎原作、中城けんたろう作画による漫画作品である。キックボクサー・沢村忠の半生を描いた作品であり、1970年から全26話のアニメ化もされた。

沢村忠といえば、東洋ミドル級チャンピオンとなった伝説的なキックボクサーであり、「真空飛び膝蹴り」や「飛び前蹴り」といった攻撃で有名だ。彼を模した架空のキャラクターもいくつかあり、例えばポケモンに登場するキックポケモン「サワムラー」は、彼の名前が由来になっている。

数々の空手大会で優勝を勝ち取り、学生空手界のホープと呼ばれていた沢村のもとに、ある時ボクシングジムの会長・野口修が現れ、タイ式ボクシングこそ地上最強と挑発、これに激しい怒りを覚えた沢村は勝負を承諾するが、タイのチャンピオンの戦いで惨敗してしまう。

これを機に沢村はキックボクシングへの転向を決意し、野口を師と仰ぎ厳しい修行を経てキックボクシング界に旋風を巻き起こしていく。

あらすじは、このような具合であり、フィクションを交えたいわゆるセミドキュメンタリーの形をとっている。なお、沢村忠という名前は野口が名付けたリングネームであり、本名は白羽秀樹(しらはひでき)である。そのため、作中でも沢村の名前は当初白羽となっている。

なお、主題歌のオープニングテーマ「キックの鬼」とエンディングテーマ「キックのあけぼの」は、いずれも沢村が歌唱をしており、オープニングでは彼の実写映像も使用されている。

因みに、本作のアニメスタッフは、アニメ『タイガーマスク』の経験者で固められており、それに通じるダイナミックなアクション描写に定評がある。

ところで、アニメで沢村の声を演じているのは、俳優・声優である朝倉宏二だ。当初は沢村本人を起用する案があり、実際に本人との交渉も行なわれた。しかしながら、沢村のスケジュールの都合により本人の起用は断念せざるを得なかった。

そこで、(ある意味文字通り)白羽の矢が立ったのが朝倉だった。なぜなら、当時彼は沢村と見た目が似ている”そっくりさん”としても知られていており、また「沢村とそっくりなのであれば声も似ているだろう」という、理屈によってとうとう抜擢されるに至った。

声優や俳優の起用は、実際にその登場人物・キャラクターとフィットするかが重要なものとなっているが、このような珍妙な理由付けで抜擢されるというのも、実に面白い話である。

【参考記事・文献】
https://lineup.toei-anim.co.jp/ja/tv/kickno_oni/story/
https://news.nicovideo.jp/watch/nw2005249
http://syowa-kayo.net/17559/
https://mangapedia.com/%E3%82%AD%E3%83%83%E3%82%AF%E3%81%AE%E9%AC%BC-6rimm0fjt
https://dic.pixiv.net/a/%E3%82%AD%E3%83%83%E3%82%AF%E3%81%AE%E9%AC%BC

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【文 ナオキ・コムロ】

画像『ゴング格闘技 1996 No.45 6月8日号 キックボクシング生誕三十周年記念特別企画第二弾!! キックの帝王 沢村忠を読む。 (ゴング格闘技)