1970年に「漫画アクション」(双葉社)で掲載が始まり、その後映画やテレビでドラマ化されて社会現象にもなった大人気時代劇に『子連れ狼』(小池一夫原作・小島剛夕画)という作品がある。
この物語は剣豪・拝一刀(おがみいっとう)が息子の大五郎を連れながら悪党を退治する人気シリーズなのだが、今回ご紹介するのは「悪の子連れ狼」というか、あまりに下衆の極み過ぎる「子持ち強盗」についてご紹介したい。
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1972年(昭和48年)5月1日、東京都上野で28歳の男性Oが強盗容疑で捕まった。
この男は以前より酒癖が悪く乱暴で、長年連れ添っていた妻から三行半を突き付けられて、生後9ヶ月の息子と二人で埼玉県のある市で暮らしていた。男は定職に就いてないために金がなく、当初は友人からの金を無心して息子を養育していたが、いつしか生活は困窮し始めて家賃も払えないために住んでいたアパートも追い出されてしまった。
いよいよのっぴきならなくなったOは、息子を背中におぶった状態で路上強盗になることを決意。手はじめに近くを歩いていた女性を強盗目的で暴行し金銭約500円を奪った。
Oはしばらく背中に息子をおぶったまま強盗行為を働き生活していたが、いつしか泣き喚く息子が足手まといとなり、ついには息子を道端に捨ててしまったという。
およそ子供の親とは到底思えない、非道で愚劣な所業…この輩、本当に血の通った人間なのだろうか…。
捨てられた息子であるが、近隣住民に保護され、騒ぎを聞きつけたOの知人が証言したことから身元が判明。その後、父親であるOは全国に指名手配され、5月1日に上野駅構内の待合所でホームレスになっている所を発見された。そしてOは遂に強盗及び婦女暴行の罪で縄目の恥を受けることとなった。
「子連れ強盗」とはなんとも珍妙な話だが、その実態はあまりに無責任な父親の成れの果ての姿であった…。
(文:穂積昭雪 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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