妖怪の一族が住む隠れ里『天狗界』とは

 日本の妖怪の中でも代表格となるものが天狗だろう。この天狗は修行途中に増長した僧侶がなるものであるとか、そういった妖怪の一族が存在するとされており、彼らが住んでいる隠れ里のような場所があるとされていた。

 多くの天狗たちが住む『天狗界』には、様々な種類の天狗がいる。鳥類は天狗になったのは俗に『カラス天狗』と呼ばれ、人間が天狗になった鼻高天狗は『大天狗』と呼ばれている。

 これらの『天狗界』は、各地の修行場である霊山にあって、富士山の「太郎坊」、愛宕山の「太郎坊」、鞍馬山の「僧正坊」(鞍馬天狗)、英彦山の「豊前坊」、大山の「伯耆坊」、比良山の「次郎坊」比叡山の「法性坊、」筑波山の「法印坊」など、山の名前でその『天狗界』のリーダー的役割を果たす天狗が設定されている。

 元々、神代の時代まで遡ると天狗たちは猿田彦まで到達することが可能だが、古代の日本には『天狗界』という概念はなく、中世以降に成立した世界だと推測されており、霊能者や修験者の中には『天狗界』を一段下に見る連中も存在する。




 また、天狗は後継者育成や人間界における協力者を作るために、度々人間を浚ったらしく、江戸期に子供が行方不明になると”天狗に浚われた”と表現された。浚われた人はそのまま行方不明になるケースもあるのだが、大概は数ヶ月から数年後に「天狗松」や「天狗の止木(とまりぎ)」に引っかかったり、意外な場所に突如現れたりする形で、人間界に帰還している。

 中には浚われた人を呼び戻す方法も残されており、捜索の際に「鯖食った、鯖食った」「鯖食った○○ やーい」と叫ぶと本人が帰還すると言われている。関東では八王寺が有名だが、各地には”呼ばわり山”という山があり、この山で行方不明になった者の名前を呼ぶと還ってくるという伝承も残されている。また、希なケースだが、”天狗浚い”や”天狗つぶて”など、山中での天狗の悪戯を避ける「狗賓餅」と呼ばれる物を食する習慣もあるようだ。

 現在では、大天狗の伝説が残る地はパワースポットや信仰の対象となっている事も多い。伝説の舞台へ足を運んでみるのはいかがだろうか。

(監修:山口敏太郎)




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