※本コラムはゲーム作品「妖怪ウォッチ1~3」をアカデミックに解析し元ネタの特定ほか妖怪伝承について解説していくコーナーです。
ぱっと見はふくよかな女の人だが、顔が福笑いのように目鼻がてんでばらばらに着いている妖怪がつらがわりだ。
しかもこの顔のパーツは常に動いているようで、これにとりつかれると「そんな顔だっけ?」と言われてしまうほど変化してしまうらしい。
しかも「女性にとりつくことが多い」そうなので、世の女性がお化粧で見た目が変わってしまったりすることを皮肉った妖怪なのかも知れない。
昔から女性の化粧というものは(主に男性にとって)不思議なものに思われてきたようで、「化粧をする妖怪」の姿が絵巻や文献に残されている。
室町時代に描かれた日本で一番有名な『百鬼夜行絵巻(真珠庵蔵)』の中程に、綺麗な着物を着て、鏡の妖怪を前にお化粧をする女性の妖怪の姿が描かれている。
しかし、妖怪の顔はおせじにもキレイとは言えない---むしろ、失敗した福笑いのようなおもしろい顔だ。
御簾(間仕切りに使われたカーテンのような家具)の向こうから、同じような女性の妖怪達がのぞいているが、お化粧の様子をくすくす笑って見ているようにも思える。身分が高いらしい化粧をしている妖怪の、着物から覗く手足はまるで獣のような形をしている。
この妖怪はどれだけ身分が高く、外を着飾ってお化粧したとしても、内面が獣のようなままでは本当に美しくなったとは言えない、という事を示しているようでもある。
(黒松三太夫 ミステリーニュースステーションATLAS編集部 寄稿・ミステリーニュースステーションATLAS)