西暦が2000年を過ぎたばかりのある日、Uさんは奇妙な体験をした。
Uさんは北海道の某山系へとトレッキングに出かけた。友人のYさんとYさんのボーイフレンド、その彼の男友達、そしてUさんという組み合わせだった。
「ねえっ、うまくいけばUちゃんもカップルになれるかも」「そっ、そうかな~」
そんな友人の言葉にUさんが惹かれたのも事実である。トレッキング当日、天気は快晴であった。
「山の空気っておいしいね」「ほんと最高だね」
山の風景は目にやさしく、日頃の悩みや鬱積がちっぽけに見えた。そして、仲間たちとUさんは気分良くコースを歩き始めた。
友人3人と一緒に楽しく歩いていると、途中道端にうずくまる女の人を見つけた。見たところ50代前半ぐらいの小太りの女である。ちょうど彼女たちの母親ぐらいの年齢であった。
「あの人、なにをしているのかな?」
Uさんが興味を示したが、友人のYさんは嫌がった。
「ほっときなよ、あの女、普通じゃないよ」「そうかな」
確かに女の服装は山登りの恰好とは思えない半ズボンにTシャツ姿というものだった。真夏の山とはいえ異常である。
しかも髪の毛はバサバサ、横顔から覗く目は明らかに血走っている。またTシャツが上にあがり、背中が一部見えている。本人は服装など一切気にしてないらしい。
「可哀想な人なら、保護してあげるのも私たちの義務よ」「やめなさいよ、Uちゃん」
真面目なUさんは、女の人の背後に回ると声をかけた。
「何してるんですか…」
女は、ゆっくりとスローモーションのように、振り向くとこう言った。
「夫を…解体しているのです」
≪後編に続く≫
(山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーション・アトラス編集部)