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【妖怪ウォッチ研究序説】「妖怪の総大将」の姿は作られたもの!?「最凶の妖怪」ヤミまろとぬらりひょんの関係

※本コラムはゲーム作品「妖怪ウォッチ1~3」をアカデミックに解析し元ネタの特定ほか妖怪伝承について解説していくコーナーです。

妖怪大辞典にて「あらゆる闇に手をそめ、悪に関する称号がすべて似合う最凶の妖怪」として紹介されているヤミまろは、妖怪ウォッチ1ではシナリオクリア後のイベントバトルにて登場。

4体いる激強妖怪の中でも最強の実力をもち、相手にとりついてHPを下げ続ける「ヤミの力」に、ダメージを与えつつ行動も妨害する「常闇の呪い」に加えとりつきを必ず成功させるスキルまで所持しているという、攻守にわたって鋤のない強敵だった。その実力は続編でも健在である。




このヤミまろのモデルとされている妖怪が「ぬらりひょん」だ。一説に「妖怪の総大将」とも呼ばれ、江戸時代の絵師・鳥山石燕の「画図百鬼夜行」でも立派な着物を着た禿頭の老人が籠から出て家に上がり込もうとしている様子が描かれている。後頭部はひょうたんのように後ろに大きく出っ張っており、明らかに人間のものとは違う様子が分かる。他にもぬらりひょんは江戸時代の妖怪絵巻などに描かれ、どの文献でも立派な姿に長い頭という特徴的な姿で登場している。

ぬらりひょん

ところが、実はぬらりひょんの「妖怪の総大将」という設定はごく最近になって生まれたものなのだ。

昭和になってから民俗学者の藤沢衛彦氏が著作でぬらりひょんを「妖怪の親玉」と紹介し、作家の佐藤有文氏が「年の暮れになるとやって来て、家の中に居座る妖怪」という話を創作。これが有名になったために「妖怪の総大将」と呼ばれるようになったのである。

一方、妖怪ウォッチの映画版やゲームにも「ぬらりひょん」というキャラが登場している。こちらについての解説は、別の機会に譲ることにしよう。

(黒松三太夫  ミステリーニュースステーションATLAS編集部 寄稿・ミステリーニュースステーションATLAS)

ヤミまろ 佐藤有文