【実話 怖い話】四国 その1 憑き物

四国と中国地方の一部に伝承されている犬神は今も実在し、それを自在に使いこなす一族は今も存在するという。果たして、21世紀の現在、犬神は存在するのであろうか。

筆者・山口敏太郎は、四国・徳島県で高校まで過ごし、大学時代から親の転勤という条件もあり千葉に移住した。千葉在住となってから、既に30年近く(途中、大学に通うため4年、仕事の関係で茨城に半年下宿しているが)を越えた。こうして、様々な街に住んでみると、四国はやはり異質な空間であったといえる。




表面上はごく普通の現代日本であるのだが、やはり根底に流れるものは違うように思える。普通現代でこんな事を気にする人はいないのだが、四国にいるときにこんな事があった。

私がある旧家の子供と遊んでいるときに、何か白い棺桶のようなものを燃やす怪しい集団と出くわし「関西から来た余所者の子供だ」と言われ、追いかけられた事がある。

何かやばいものでも見てしまったのであろうか。

兎に角、その頃の四国は、江戸時代の文化・恨みが身近に残る土地柄であったことは事実である。

ここまで背景を紹介すると、今から話す内容も理解頂けるであろう。

高校時代、筆者は徳島県立の高校に通っていた。旧制中学の流れを組む学校で、生徒も個性的な仲間が集まっていた。

後に石田壱成とビックバンドを結成する佐藤タイジくんや、尺八の若手奏者で評判の高い原郷界山くんなどがおり、愉快な学園生活をおくっていた。そこで奇妙な事件が起こった。

あえて仮名にするが小柄な某君が廊下で大暴れをしているのである。

仲間数人を両腕で振り回している。もの凄い怪力である。またその暴れている某君の目があっちの世界にいってしまっている。

「まさか、薬なのか?」

と一瞬思ったが、昭和50年代の田舎高校生の我々に手に入るわけもなく、某君もそんな事をするような人間ではなかったし、非常に平和的な人物なのだ。

唖然としていると彼はみんなの制止を振り切り、猛スピードで学校から走り出していった。

「一体あれはなんだ?」と彼を制止していた一人の友人に尋ねてみると、意外な答えが返ってきた。

「ああっ、時々ああなるんだよ。ああなると人柄が変わっちゃってどうしようもない。力も人間の力とは思えないし、彼の家は狸を信仰しててね、狸が降りてくると突然山に行きたくなるんだ」

「狸が降りるってそんな馬鹿な、現代日本だぞ、奴だってプロレス好きの普通の高校生じゃないか」

「だっておまえも見ただろう」

この事件に遭遇してから、私の見解は一層深まった。四国はまだまだ日本古来の風習が生きていると。




それからしばらくして、親戚の人(この人の家は四国に数百年定着している)から、狸崇拝について詳しく教わる事になった。

ある地域(具体的な町名は伏せる。またその町でもほんの一部の地域が該当する)に狸を崇拝する土俗の教団があり、様々な現世利益を扱うという。しかも、その信者には狸に憑かれる者も多くいるが、狸を使役していろいろ仕事をさせ、願望を達成するらしい。

また日頃は、その狸を暗い穴蔵などに隠しておき、敵や裏工作に使う時に穴蔵から出すという。

恐るべき事に、ここで「狸」と呼ばれているモノは、本質的には他県人が「犬神」と呼ぶモノと同一であり、徳島県内に数十箇所点在する狸の祠は、この「お狸さん信仰」に起因があるのだという。

つまり、「お狸さん信仰=イヌガミ信仰」を深く信じる人が、自分の町内に奉ったのが狸の祠となったというのだ。

(山口敏太郎 ミステリーニュースステーション・アトラス編集部)





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