空から奇妙なものが降ってくる。
魚やオタマジャクシという生き物が降ってくるケースであるファフロッキーズ現象は、日本でも近年報告されて話題になった。また、UFOが目撃された後に、その破片らしき謎の金属が発見されることもある。
中には「髪の毛」のような物質が降ってくるという奇妙なケースが存在している。
1986年、伊豆大島の北東部で強い風が吹いたと共に周囲が暗くなり、長さ20センチ程度の黒い髪の毛のような物が大量に空から降り注ぐという事件が起きた。
空から髪の毛が降ってくる、という事例は昔から世界中で報告されており、1640年には青森県津軽地方で長さ6、7寸の髪の毛が降ったと「津軽一統志」に記されている。また、1596年には京都で長さ60センチの黒い髪が降り注いだという。
この現象は日本だけでなく世界中で報告されており、アメリカのハワイでも金髪に近い髪が降ってくる現象を、昔から「ペレの髪」と呼んでいた。ハワイの伝説には、奔放な性格の美しい火山の女神ペレが登場する。ハワイの人々は、時折空から降ってくる謎の金髪を、このペレのものであると語り伝えていた。
現在では、この「ペレの髪」も日本に降った謎の黒髪も、いずれも「火山毛」であるとみられている。
火山毛は火山の噴火の際に発生するもので、高温のマグマが噴火で細かく飛び散った際、長く引き延ばされたものが風などで急速に冷やされることで繊維状になって固まったものとみられている。火山毛の細さは0.091ミリ、重さは10センチ程度の長さでも0.002グラムほどしかない。
火山毛は噴火時の爆発の勢いによって天高く舞い上がり、風に乗って遠隔地まで運ばれて地面に落ちるのだ。
日本の火山毛が黒なのに比べて「ペレの髪」が金色なのは、噴出した溶岩の温度や質の差によるものとされている。
(田中尚 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)