遙か昔の時代の遺跡から、当時の技術では当然作ることができないような物体や、未来の技術を知っていたかのような物体が出てくることがある。
それらの多くは場違いな工芸品「オーパーツ」と呼ばれたりして、当時の人々よりも遙かに技術の進んだ宇宙人が地球に降臨し、知識や技術を伝えていた証拠ではないかとする説が存在している。
確かに古代の人々が残した壁画などには、そうとでも解釈しないと納得できない、奇妙な造形の人物が出てくるものが多数存在している。
メキシコはマヤ文明の遺跡、パレンケ遺跡にて発見された王の石棺には、奇妙な彫刻がなされていたのだ。
有名な「マヤの宇宙飛行士」の彫刻である。石棺にはロケットのコクピットを思わせる狭い部屋のような空間が描かれており、その中で座り込む王の姿がある。王の手元にはレバー、口元にはインカムのようなものが描かれており、宇宙飛行士と同じ着座姿勢でロケットに乗り込んでいるようだと話題になったのである。
この説は1968年に、超古代文明ブームの火付け役にもなったスイスの作家エーリッヒ・フォン・デニケン氏の著作「未来の記憶」にて紹介され、話題となった。
しかし現在では、この石棺の彫刻は宇宙飛行士ではなく、死に臨む王の姿を描いた物であると判明している。
この石棺の中に埋葬されていたのは683年に80歳で亡くなったパレンケ王朝11代目のパカル王であるとされている。
この石棺と似た図案の壁画が同じ遺跡内に存在している「十字架の神殿」「葉の十字架の神殿」でも確認されており、ロケットに見える部分は図案化された主食のトウモロコシなのだ。
トウモロコシの先端には主神のケツァルコアトルが止まっており、王は支配者を示す印の上に座っている。そして、下には死後の世界である地下世界の守護者が大きく口を開けて王を飲み込もうとしている。つまり、この宇宙飛行士の図は、死に臨む王の姿を神話伝承に照らし合わせ、図案化したものだと見られているのだ。
古代の遺跡や遺物には、まるで現代にしか存在しない物を写したかのような造形のものが見られるが、その背景には彼らの豊かな想像力と信仰心、表現力が存在しているのだ。
(加藤文規 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)