讃岐の白狐です。
さて、新年が明けて各地で成人式の報道など聞く度に思い出される不可思議で悲しい思い出を今回は投稿させていただきます。
今から20年ほど前の話になりますが、成人式前日に高知県高知市に於いて新成人対象の大きな野外ライブが有り、高松市から私と後輩2名で仕事に呼ばれて訪れていました。
撤去を終えたのが深夜零時を回り、そのまま高松に向かって私はハイエースを運転していました。
同乗していた後輩の内1名は、その年の新成人でしたので、翌日の成人式へ参加させる為、途中の南国市の実家を経由して彼を下ろして2名で高松まで帰る予定でした。
彼を助手席に乗せて不慣れな路を案内させながら私は走っていましたが、彼の実家はかなり辺鄙な場所にある様で、街灯も無く、狭い山道を上ったり下りたりしながら向かいました。
カーナビも付けていない為、果たして彼を下ろした後に無事、自動車道に乗れるのか不安になって居た頃、突然、前方30m程にぼんやりと明るい光が見えました。
道の右側は点々と古い家並みが続き、左側は刈られた広い田圃が広がっている様で近付くとその灯りは道よりの田圃の中に存在しており、良く見ると光りの中に晴れ着を着た2人の女性が立っているのが分かりました。
というよりは2人の女性が光っているのが分かりました。2人は満面の笑みを浮かべて、それぞれが別の方向を向いて立っていました。
その時、「此処です。ここが僕の家です」まさにその女性たちが立っている所で彼は私に声を掛けて来ました。
私は、彼女達が幽霊か誰かの念かは別にしても、現実の者たちではない事は分かっていましたので、ここで車を停車させる事は嫌だったのですが、仕方ありませんでした。
自分の荷物を持って車を下り、助手席の窓越しに帰り道を説明している彼の背後で2人の晴れ着の女性の宙に向いていた視線が彼に注がれていくのを見ました。
見たと言うか、満面の笑みが無表情に変わっていくのを感じました。
彼が自宅に向かって車の前を横ぎると同時に私は車を急発進しました。
バックミラー越しに自宅に入って行く後輩と彼を見詰める2人の光った晴れ着の女性はまだ見る事が出来ていました。
彼の道の説明が耳に入っていなかった私は、もう一人の後輩に確認しながら念の為に彼にも女性たちの話をしましたが、やはり見えてはいなかった様でした。
結局、彼は翌日の成人式にはいかなかったようでした。
それどころか会社には二度と出社して来ず、或る日、母親からの一方的な電話で退職する事になりました。
成人式に参加しなかったのは同席する筈だった会社の別部署の社員から聞き、約1か月後、その社員から自宅で首を吊って亡くなったと聞きました。
一切、彼に何があったのか。あの女性達との因果関係も分かりませんが、ただただ気分の落ち込む出来事でした。
(アトラスラジオ・リスナー投稿 讃岐の白狐さん ミステリーニュースステーションATLAS編集部)