20世紀、冷戦期は世界的に核戦争への恐怖が高まった時代でもあった。この時代には世界中の各地に秘密裏に建造された核実験施設や軍事基地が存在している、と噂されていたがいずれも噂の域を出ないものであり、中には創作としか思えないような荒唐無稽な基地も存在していた。
だが先日、NASAが「固い氷床の下30メートルに建設され、長らく忘れ去られていた核基地」が実在していたと発表。画像を公開して話題になっている。
NASAジェット推進研究所のチャド・グリーン氏は、最先端の自律飛行機でグリーンランドにて定期的な調査任務を行っていたところ、厚い氷の下に巨大な何かが存在していることに気づいた。そこで飛行機に搭載された「無人航空機合成開口レーダー」を用いて氷の表面と内部の層を地図化し、3Dモデリングを駆使して氷河の下に存在する奇妙な構造物を再現することに成功したのである。
この構造物は「氷の下の街」と呼ばれていた、冷戦時代に米軍が建設した地下核基地「キャンプ・センチュリー」。旧ソ連によってアメリカ本土が壊滅した場合に発射できる核ミサイルを保管する目的でグリーンランドの広大な氷床の地下30メートルに建設された巨大隠蔽壕だったのだ。
公式には、この地下核基地は8年間の運用を経てひっそりと放棄された研究施設とされており、最大600発の核ミサイルを氷の下に隠す計画「アイスワーム計画」の拠点として機能していた。
なおこの事実は運用を終えた数十年後の1997年にキャンプ・センチュリーが米国の核防衛計画の重要な一部であったことが認められるまで、明らかにされていなかった。
分析によって明らかになった地下構造物の全長は約2.9キロ、21本のトンネルで構成されており、1959年から1967年にかけて米軍が使用していた間は原子炉で稼働していた。
しかし、下水システムの不具合により地下基地の大部分が悪臭で満たされてしまい、換気を改善してもそれほど改善されなかった上に軍の計画担当者もこの核ミサイル計画に問題があることに気付いた。
基地が建造されている場所は地面ではなく厚い氷河の中だったため、氷床の移動により、ミサイルの安全な保管や発射施設の建造が不可能になることが分かったのである。なお、基地の破棄に伴い原子炉は撤去されているが、基地の中にはまだ核廃棄物が残されており、潜在的に危険な存在であると問題視されている。
氷圏科学者のグリーン氏は、この発見は偶然であり、チームの当初の目的は無人レーダードローンの能力をテストすることだったと指摘。「氷床を探していたら、キャンプ・センチュリーが飛び出してきた」と今回の調査チームのメンバーは語る。またグリーン氏は、「今回の新しいデータでは、秘密都市の個々の構造が、これまで見たことのない形で明らかになった」と述べている。
今回チームが収集した情報は、気候変動と氷床の融解によりキャンプ・センチュリーとその核廃棄物、化学廃棄物、その他の放射性廃棄物が再び地表に現れる可能性があるかどうか推定する取り組みに利用される可能性があるという。
「氷の厚さに関する詳細な知識がなければ、急速に温暖化する海洋と大気に対して氷床がどのように反応するかを知ることは不可能であり、海面上昇率を予測する能力は大きく制限されるでしょう」と科学者らは述べている。
(山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
Heidi Baun ToppによるPixabayからの画像