インド、ヒマラヤの山の頂上に位置する浅い湖。ここには実に何世紀分にもわたる遺骨が沈んでいるという。
一見したところでは、このループクンド湖はこの地域のありふれた湖のように見えるが、近づいてみると湖面からも見えるほど、少なくとも数百人分の人骨が沈んでいるそうだ。
遺骨の主が誰であり、どうやって湖にたどり着いたのかは長い間研究者の間で議論の対象となってきた。
しかし現在、38の人骨の分析を含む新しい研究により、これらの人々は1,000年の間にこの地域に到着した異なる複数のグループたよるものだという事が明らかになった。
「古代の人のDNA、安定同位体の食物の再構成、放射性炭素年代測定などの生体分子分析の使用により、ループクンド湖の歴史は予想以上に複雑であることを発見しました」とハーバード医科大学の遺伝学者デイビッド・ライヒ氏は述べる。
調査対象者38人のうち、23人は現在のインドから来ており、14人はクレタ島とギリシャから、残りの1人は東南アジアから来たと判明したという。
ハーバード大学の進化生物学者イーダインハーニー氏は、「ループクンドの人骨を遺伝学的に調べていくと非常に興味深い結果となりました。一般的に東地中海に関連する祖先を持つ人の遺骨が存在するという事は、ループクンド湖が地元だけでなく世界中から訪問者を惹きつけていたことを示唆しています」と述べた。
しかし、何世紀にもわたって多くの人々を湖に引き寄せた理由としてはっきりしたことはわかっていない。山越えルートの中継点で事故死した人の遺体が積み上がったのか、生け贄などの宗教的理由があったのか、墓地のように使用していたのか。
様々な説が出ているが、今後の調査で判明するだろうとみられている。
(勝木孝之 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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