人間が突然姿を消してしまう現象は世界各地で存在している。日本では「神隠し」とも呼ばれており、現実に未解決な失踪事件として知られるものも多い。時として、集団あるいは乗り物と共にといった形で発生することもある。かつてこれらのような事件は、「異次元」の存在が関与しているとも言われていた。
その事件は、1880年9月23日アメリカのテネシー州で起こった。ダビッド・ラングは牧場を営み家族と生活を共にしていた。昼下がりの屋外で、息子と娘が遊び回っていたころ、ラングは馬の手入れをしようと牧場へ向かっていった。夫人が見守る中、ラングの友人が義弟と共に四輪馬車に乗りラング家の前を通りかかろうとしていた。
手入れを済ませラングが家へ向かおうとしていたその時、突如として姿が消えてしまったのだ。夫人は金切り声をあげ、子どもたちは立ちすくみ、友人たちは急いで馬車を降りてラングが消えた現場へ駆け付けたが、彼の姿はなかった。
現場は、木立も茂みも、ましてや穴一つない草原であり、ラングの持ち物も落ちていなかった。やがて保安官を中心に本格的な捜索が開始されたものの、手掛かりとなるものは発見できなかった。事件から7ヶ月ほどが経過したある日、ラングが消えた地点の周りに直径4~5mの黄色い草の輪ができていたのを子どもたちが発見した。
子どもたちは、そのそばで父親の名を呼ぶと、驚くべきことに「助けて」とかすかに繰り返す父親ラングの声が聞こえてきたという。ラングは、その後も姿を現すことはなかったそうだ。
この事件は数ある失踪・消失事件と比べて、消えた人間の声だけが聞こえてくるという点で、極めて珍しいケースとも言えるだろう。これは、ラングが偶然生じた異次元の裂け目、あるいは異次元の空洞に落ちて閉じ込められてしまった、といった推測がなされていた。
ただし、この事件については創作であるという説が濃厚である。もともとこの事件は、1950年代にアメリカの雑誌でラングの娘から提供された話として掲載された記事が最初とされている。しかし、その内容が1890年代に発表された短編小説の内容と酷似していたことが判明し、またラングの娘も明確な特定がされなかったこともあって、事件そのものがフィクションであったと考えられている。
ラング消失事件は架空であったかもしれない。しかし、異次元への突入を思わせる謎の消失事件が世界各地に存在しているのは事実である。1956年にアメリカのオクラホマ州にて、遊んでいた少年が垣根を超えた途端に消えてしまったという事件があり、その事件の数週間前には、現場となる垣根で謎の人物の顔が空中に出現しているのを目撃したという証言があったという。
偶発的な異次元の歪みに巻き込まれたのか、それとも異次元人という存在による拉致・誘拐であるのか、この事件については謎のままであるという。
【参考記事・文献】
・斎藤守弘『SF入門なぞの四次元』
・人体消失事件
https://plaza.rakuten.co.jp/itimuanbekkan/diary/200812250000/
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(にぅま 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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