今年は夏の暑さが長く居座っていたが、ようやく涼しくなって秋らしい日が増えてきた。紅葉狩りを楽しむため、山や森へ散策に出かけた方もいるのではないだろうか。
そんな山の中には時折、野生動物に対する注意を促す看板が立っていることも。「エサをやらないで下さい」「私有地で許可なく掘りおこさないでください」等など、様々なメッセージが書かれていたりする……が、そんな看板が一つ所に集中していたとしたらどうだろうか。
先日、とあるXのポストが注目を集めた。「これは六甲の有名スポットです」の文面とともに投下された写真には、ごく普通の山道に所狭しと警告看板が設置された光景が広がっている。
文面は「イノシシにエサをやらないで下さい」「飛び出さないで下さい」といった割とよく見かけるものから、「みだりにころさないで下さい」「美味しく残さず感謝して食べてください」といった文言の看板や黄色い服の人物がお辞儀をする電光看板など、少し不気味さを感じるものも。
さすがに違和感を覚える看板だらけの光景に、ポストを見た人たちからは怖がる声や禁忌を連想する声が上がっていた。また、誰にも読めるようひらがなで書かれているのがかえって怖いとの声もあった。
これは六甲の有名スポットです pic.twitter.com/jsKMCWfAIe
— こな (@kooooona) November 10, 2024
果たして、この注意看板の群れは何なのか。薄々気づいていた人もいるかもしれないが、この看板はれっきとしたアート作品。8月24日から開祭されている現代アートイベント『神戸六甲ミーツ・アート2024 beyond』にてグランプリに輝いた水田雅也氏の作品「イノシシ村のお願い」。
かつて六甲山にはイノシシに餌を与えて交流できる「イノシシ村」と呼ばれていた地域があったが、時代の流れでイノシシとの関係性も変化。害獣として危険視したり、接触を避けたり、一方でイノシシを保護する声も上がるなど、人や集団、時代の移り変わりによって「お願い」は変化していった……という自然と人間の関わり方の変化を表現した作品だったのだ。
この作品は山歩きと芸術鑑賞が同時に楽しめるトレイルエリアに設置されていたものだったことも手伝い、鑑賞者に強いメッセージ性を与えるものとなったようだ。
今年で15回目となる『神戸六甲ミーツ・アート2024 beyond』は過去最多61組のアーティストが参加。里山の光景とアートを楽しめる体験型のアートイベントとなっている。11月24日まで開催されているので、気になる人は足を運んでみてはいかがだろうか。
(加藤史紀 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)