スピリチュアル

「私が美大生だった頃の不思議体験」

もう今から二十年程前の話です。美大生になった私は色んな事をやりたがりました。自分自身は油絵を専攻していたけど、絵画、木工、彫金、写真。また舞台も友人が出来たりして接点があったので、舞台美術にも興味がありました。

工場跡を借りて自由に住みながらアトリエとして使おうと不動産屋を回り、1人では難しいが複数人でならと同級生を募り、工場を見つけたが様々な事情により借りる事は出来ませんでした。

代わりにと不動産屋から紹介されたのが……「軽作業場付き住宅」。六畳の二階建て、風呂もトイレも付いてる、かなり小さな一軒家でした。

思ってた物よりかなり小さくなったけど、同級生も本気にしてない人が多かったので丁度良かったです。ボロくて狭いけど物置まである、他に物件も無いとの事だったので2人でシェアして借りることになりました。

作業所だけをシェアするつもりでしたが、同級生(以後S)は、「一階に住む!」と言いだし、とりあえず了承しました。

隣には大家さんの家があり、挨拶に行くと品が良く優しそうなお婆さんが出てきました。結構立派な家ですが、一人暮らしとの事。そして彼女から「私はこっちのお母さんとでも思ってなんでも言ってね」などと言われて、『良い人そうで良かった』と友達と顔を合わせました。

すると、お婆さんは「ここにはね、弟が住んでたんだけど…ここで亡くなったわけじゃないの」と言い出しました。

余り気持ちいい話ではないなぁと思いつつも、「そうなんですねー」なんて流して聞いていたら、再度「ここには弟が住んでたのよ」「亡くなったのは病院なのよ」とさっき聞いたわ…と言う話をリピート。

『ボケてる様には思えないけどなぁ』なんて思っていましたが、しばらく顔を合わせる度この同じことを言われました。

この家を借りる時に家賃を多少まけてもらいましたが、こちらの希望金額までには頑なに下げてもらえなかったので、当時は事故物件ではないとの主張なのかなと認識していました。

家は物置にキャンバスも置けるし、部屋とは別のスペースで油絵を描けるのはかなり便利な物件不満は何もありませんでした。

私はいつも押し入れを机代わりにしていたので、引越して早々にその家でも押し入れを机にしようとセッティング。厚めのベニヤを引いて強度を高めて本やスタンドを設置、天袋があって空いてるのが気になって閉めました。

そこの天袋は、昔の家には必ずあった押し入れの上にある板で開けると天井裏が見えるタイプよくよく考えるといつも天袋の板が開いていました。

いつも天袋が空いているので、気になるので閉めるのですが、大学から帰ってくると開いているのです。でも特に気にせず毎日の様に閉めていました。

そんな日が続いたある日、学校で怪談めいた話が出たのでふと家の話をしてみました。

「大家さんの弟が住んでたらしいけど、『うちで死んだんじゃない』って顔見るたびに言うねん。あと天袋がいつも開いてたりするんよね」

なんて事を何気なく言ってみると、同級生がとても興味を持って「行ってみたい。見てみたい」というので来てもらう事になりました。

近くのコンビニでお菓子やビールを買って家まで案内。すると、やはり天袋は開いていて「ほらね、こんな風に開いとんねん」と天袋を閉めました。

何か変な事があるかと言えば特にない訳で、大学での話などしながらビールを飲んでいたら、「あ!!!」と天井を指差して友人が叫ぶので、「どうしたん?」と見上げると指差した先にキラキラ何かが光ってフワフワしていました。

え?ナニコレ?と思ったけど、下をみるとポテチがパーティ開けになっている。内側の銀の包装紙が光を反射して天井をうっすら照らしていただけでした。

ちょっとビックリしただけにちょっと声高に「ハハハ!こんなもんなんだよね!こういうのって!」、なんて2人で笑い合っている言葉の間に…

ガッガッガ!!

と、物凄い音が押し入れから響き渡ったのです。そんな音は今まで聞いた事がなかったので、ハッと目をやると音を立てながら天袋が閉まっているではないですか。

『え?誰?ナニ?流石にコワッ!なにがいるん?』って思っていると、サッと友人が天袋に顔を突っ込みました。そして「何もいないし、何もないよ…」と言いました。

『えー?何もないなんておかしいやろ?なんなん?』と思いつつ、とりあえずまた天袋を閉めようとしましたが、いつもよりやけに重い・・・ただのベニヤなのに、それに風もないのに・・・なんだか意味がわかりませんでしたが、とりあえず閉めることが出来ました。

その後、どうしたか覚えてないが特段何も起こらなかったと思います。

別の日にその話をしたらまた数人が見に来ましたが、相変わらず蓋は開いてたけど特に何も起こらず。なので、お供えでもしとくかーってタバコを一本、ベニヤの天袋の真ん中に置いてからテープで止めて押しピンを刺しました。

後日、ある日のこと、私はタバコを吸いますが、吸ってないのにタバコの煙の様な物を見る様になったのです。

消し忘れかな?と灰皿をみても消えてる。下のやつかな?と一階に降りても誰もいない。妙だなぁと思うけど、それからソレを毎日見る様になったのです。

割と忙しくすごしていたのもあったために、なぜかなんてあまり深く考えませんでした。

それから暫くすると、寝るとき、寝ていると不思議な事が起きる様になりました。

誰かが訪ねてきてベッドの横に居たりして話しかけてくるけど眠いので相手出来ないなぁと……話を聞きながらもちゃんと起きるかなあ、とガバッと起きると真夜中で、さっきの景色のまま部屋の明るさが全然違うとかはよく起きました。また合唱団?の様な人達が永遠に「アーーーー」とか言ってたり(教会とかで唄われてる様な澄んだ感じの声)、小人みたいなものが侍の格好をしていてお茶汲み人形のマネを必死にしていて、私の目線を感じるとネズミの様にサッと走って消えるとか・・・を覚えています。

起きる出来事はそんな内容だったので、普通であれば怖いと思うのでしょうが、当時は怖いとは全く思いませんでした。

そんな日々が続くので、ちょっと不可解なことに対して免疫ができていってしまったからなのか、どんどんと加速していきました。また街中でもまれに見る事があったのです。

街中で見たのは数件だけですが、今でもクリアに覚えています。

見たのはどれも真昼間。寿司屋の板前の格好をした人が路地から半身を出して、お客か誰かが来ないかな?みたいな感じで見ているんだけど、不思議な事に見えてるけど見えないというか、じゃあ思いこみなだけと言われたらそれまでなんだけど、見えているのは煙の様な物なのに頭にははっきりイメージが流れ込んでくる。

服装のデザインはもちろん、襟にちょっとついたシミだったりよれてるとかでも清潔感はあって肌感とかも間近で見る様に見える。見えてないけど…感じる。近くに寄って路地を見ると路地は5センチ程度位しか幅がない。外でそういう物を見るのは初めてだったので、かなり驚きました。

その後も、見た目は白いけど黒いドーベルマンみたいな犬を見たり、その目線の先に動物病院があったり、ちょっと不思議なことはあったけど私は家を気に入っていたので、家のせいとは当時は思わなかったのです。

友達に話すと、引っ越せばいいのにと言われる事もあったけど『別にお金とか盗られたり嫌な事がある訳じゃないので良いかな?』とあまり気にも留めていませんでした。

ある日、大学で「黄金テンペラ」という油絵の前身である技法を学んでいたときのことです。

テンペラっていうのは、漆喰に卵を展色材として顔料を定着させる事ができます。絵の間に金箔を張り、磨く事で金の板の様にしたり、型を使って凸凹のある細工を施したりするのですが、一連の流れは中々大変だけど面白いのです。テンペラの特徴は面相筆と言う一番細い筆で細密描写をしながら描けるもので、細密描写は元々好きだったのでより真面目に授業を受けていました。

私は当時描いていたのは、人間を擬人化して描くという物でいつも男とも女とも若いとも言えない人物の様な物を描いて表現していたましたが、この時はなんとなくお爺さんを描いていました。

何故だかわからないけど気づいたら描いていて結構早いスピードで描きあげたのです。とても細密描写で、周りから「あれ?なんか描くの早くない?なんで?誰これ?」と聞かれたましたが、自分でもわからなかったので返答に困っていました。

そこに一階に住むSが突然バン!!とえらく焦った様子でドアを開けて入り、私の顔を見るなり「大変やぞ!」と言いながらスッと目をこの絵に落とした瞬間、「何やってんだ!てめーー!」と普段起こらない人間が急に怒りだしました。

「何やってるのはお前だろ!授業始まってるし」と言うと、Sは「違う!何描いてるんだ!お前は!」と……

「なに?なんのこと?」

Sは続けて「お前が描いてるのは大家さんの息子だぞ!!」と……私は「え?!いやいや、っていうか、お前(S)は大家さんの息子知らんやん」と……

すると、Sは「俺は見たんだよ。と言うか、今日大家さんが倒れた!近所の人が連絡がつかないからトイレの窓から入って見てくれと頼まれて家に入ったんだ!!家には仏壇があって、飾ってたのがお前の絵と同じ人だ!!」

いやそんなことあるか?大家さん倒れたのか…どうなった?

Sは「いや、どうなるかわからん」と言いました。

絵はテンペラの講師から褒められたけど、お爺さんの理由を聞かれて何故か無性に腹が立って変な回答をした覚えがあります。

数日後、確かお婆さんの葬式があったと憶えています。その後、色々あったけどなにか居心地も悪くなった気がしたのもあったのと、もっと色々やりたい欲が出て、以前からやりたいと思っていた工場を借りる思いが再燃、アパートを一棟借りてシェアアトリエ付きアパートを経営する事にしたので引っ越しすることになりました。

引越しまで色々見えていたけど、いつものことなので何も思わなくなっていました。

ほぼ全部引越し終わった時、『そういえば』と思い出して、天袋のテープを剥がし押しピンを取って中を覗いてみました。天袋の板の真ん中にはタバコが置いてあり、天板を動かしたりしたり、特に移動してもいませんでしたが触るとコロコロと移動しました。

『奇妙だなあ』と思いつつも、二年ほど住んだ家を後にしました。

驚いたのはその後、引越してから一度も煙が見ることがありませんでした。不思議な現象も、しばらくはほとんどありませんでした。

一緒に住んでたSはSで色々あったらしかったのですが、何があったかは全く言ってくれなかったので何も知らないし、「お前に起きた事も言うな」と真剣な眼差しで言われていたので伝えませんでした。

美大生だったので、クスリでもやっててみたんじゃないか?とか思われる事もありますが、私はそういうのは一切手をつけてません。絵で使うシンナーとかじゃないの?とかってのも言われることもありますが、油絵ではシンナーは使用しないのでそのようなことは愚問です。
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ここまでです。様々な不思議なお話をお聞きしている方には物足りないお話だったかと思いますが、何かの足しになりましたら幸いです。乱筆乱文失礼致しました。

(アトラスラジオ・リスナー投稿 Nさん ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

Ylanite KoppensによるPixabayからの画像