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現在でも通用する?!「ローマの水道」の驚くべき技術

古代国家の中でも、ローマほどに高度な水道を備えていた国家はない。しかも、現在に至ってもその水道の一部が活用されているという驚くべき技術によって水道は建設されたのである。

元々ローマは、湖や川から水を汲んでおり、しかも水質汚染や人口増加による水不足という問題を多々抱えていた。これによりローマ帝国は、国内に水道を建設するようになった。

古代ローマの水道は供給元の水源から供給先の都市まで、水源地の取水口 地下・地上の導水管 低地を通すための水道橋 不純物を除去する沈殿池 都市の各箇所へと分水する施設(カステルム・アクアエ)といった、複雑で精巧な建築がなされていた。

3世紀末までに11本もの長距離水道が完成しており、1日100万立方mもの水量がローマに供給されることとなるが、これは現代の東京市民の水使用量をしのぐほどであったという。

水路は、最低限のものは地下に設けられていた。これは、水が外気に触れないために水質の確保がしやすいということ、戦争時による破壊を防ぐため、雨水の侵食などによる汚れができにくくメンテナンスや清掃が少なくて済む、といった理由からであり、地下に設けることによるメリットが大きかった。

点検用の立杭も用意され、その入り口にはマンホールが使用されるなど、現代の水道と同じような形でメンテナンスが可能であったという。また、水路が地下であったということから、サイフォンの技術が応用されて水が高所に持ち上げられていた。これは、50m以上の窪地を通る各所に設けられていた。




水路は、山の上にある水源から高低差のみを利用して水を流していたために、一定の傾斜を設けていた。平均1kmあたり5m、傾斜率1/200、これによる水流の速度は秒速1.3mで、現在の日本とほぼ同じになるという。この傾斜率は各所できわめて精密に計算されていた。

例として、水源から50kmもの距離となるニーム水路において川を横断するために造られた「ポン・デュ・ガール」がある。16階建てのビルに相当する高さ49m、長さ275mもの三層構造の水道橋であるポン・デュ・ガールは、水源から街までの高低差が17mほどであったことから、1kmあたり34cmという微妙な勾配によって水が流れる設計がなされていた。

傾斜が高すぎると水流による水圧があがることで導水管が削られてしまい、逆に低すぎると水がよどみ水質に影響が出てしまう、このギリギリのラインをとった傾斜率は、メンテナンスをも想定して割り出されたものである。

なお、水道橋の橋脚には水圧を分散させる仕掛けも備わっており、2002年にフランスを襲った水害でも水道橋の崩壊を防いだ。さらに、長距離・長期のメンテナンスや清掃を行なえるよう、水道は上下2本の水路を走らせていた。

こうしてみると、いかにローマ水道の技術が高い水準であったかがうかがえる。このような同水準の水道が新たに建設されるのは、なんと19世紀後半になってからであったというのだから驚きである。

【参考記事・文献】
ポン・デュ・ガール(ローマの水道橋)
https://world-heritage.net/pont-du-gard/
古代ローマの上水道―構造から水道橋の建設方法、コンテストまであった水質管理まで―
https://anc-rome.info/waterworks/

【アトラスラジオ関連動画】

(黒蠍けいすけ 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

画像 ウィキペディアより引用 CC 表示-継承 3.0