ネブラ・ディスクは、1999年にドイツのガクセン=アンハルト州ネブラ近郊の丘の頂上付近にある塚から発掘された青銅製の円盤である。約3600年前の青銅器時代に作られた人類最古の天文盤と考えられ、現在はユネスコ記憶遺産に登録されている。
ネブラ・ディスクは、金の装飾で太陽や月そしてプレアデス星団とおぼしき32個の星々があしらわれ、太陽暦と太陰暦の両方の概念が取り入れられている。研究者によれば、閏年をいつに合わせるかを予測し、太陰暦と季節を同期させていた可能性が高く、この機能はごく少数の人々のみ知られていたと考えられる。
この機能については、およそ2600年前のバビロニアの遺跡から発掘された楔文字の文書に見られるのが最古とされていたこともあり、そうなるとこの天文盤はさらに1000年ほど遡るものとなる。
この天文盤は、農業における種まきと借り入れの時期などを判断するために使用されたとも考えられているが、さらに驚くべきことに、発見当地付近でプレアデス星団の位置を合わせると、数週間後に月食が起こるということもわかるという。
三日月のそばにある縁は、夏至の日の出から当時の日の出までの方角を示す帯で、反対側にもこれと同様と思しき帯の跡が残っており、そうであれば日の入りの方角を示すものであるという。
興味深いのは、縁に沿って船のような湾曲した物体が描かれている。考古学者によれば、これは古代エジプト文明の影響を受けたシンボルであり、太陽神を運ぶ「太陽の船」ではないかとの見解がある。これにより、この当時ドイツとエジプトの間に交流があったのではないかとも考えられた。
このようなきわめて高度な天文的機能を備えているネブラ・ディスクは、先史時代のヨーロッパの遺跡から、このように天文関係の遺物が出土されることが、きわめて稀であったこと、そして青銅器時代のヨーロッパには高度な天文知識が存在していなかったと言われていることなどから、オーパーツの一つとして認知されるようになった。
しかし、この天文盤に対する真贋論争が非常に盛んに行なわれた事情については、その出自に理由があった。この天文盤は、骨董業者によって流通していた物品として美術館学芸員の手に渡ったものなのだが、なんと違法に盗掘されたものであることが判明した。
そこで、ドイツの考古学者ハラルド・メラーが警察のおとり捜査に協力したことで、闇商人の手から取り戻すことができた。
実は、この天文盤が3600年前の青銅器時代のものであると判断された理由は、これと共に出土したと盗掘者が言う斧や剣、腕輪といった他の出土品の調査によって得られたものだった。その後、天文盤の金属などが改めて調査・分析された結果、ネブラ・ディスクは考えられていた年代よりも1000年下ってからの鉄器時代のものであり、また別の場所で発見されたものだったのではないかと判断された。
しかし、ネブラ・ディスクを展示しているドイツの州立先史博物館は、こうした主張に対し、「どちらの主張も明らかに間違っている」という声明を出すなど、論争はいまだに落ち着く様子は無いようである。
【参考記事・文献】
並木伸一郎『神々の遺産オーパーツ大全』
超古代のオーパーツ、謎の円盤ネブラ・ディスクとは?
http://fushigi-chikara.jp/sonota/7657/
謎に満ちたオーパーツ「ネブラ・ディスク」の出自に新説登場 / 人類最古の天文盤の真相はいかに
(黒蠍けいすけ 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
画像 Dbachmann, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1500795による