画像『アパッチ野球軍 BOX』
『アパッチ野球軍』は、原作花登筺(はなとこばこ)・作画梅本さちおによる漫画作品として、1970年から72年まで週刊少年キングで連載、71年から翌年までアニメ化された作品である。
夏の甲子園で完全試合を制する活躍を見せるも自らの手で選手生命を絶った主人公堂島剛が、山中の過疎の村に暮らす人間離れしたワイルドな不良生徒たちに野球を指導していく物語となっている。
当時、野球漫画と言えば『巨人の星』以来、『アストロ球団』『侍ジャイアンツ』といった作品が隆盛していたが、その中でも『アパッチ野球軍』のインパクトは強烈であったという。いわゆるスポ根要素はもちろんながら、むしろそのまわりの人間模様や人間的成長に重きを置いた表現が強くなされており、今なお根強いファンが多い作品でもある。
一方で、本作は差別的用語や描写が非常に多いことでも知られている。「部落」などといった言葉の使用から部落差別の助長につながるとして再放送が自粛されているという話もあり、現在では封印された作品の一つとしてあげられるようにもなっている。長らく復刻が困難であると言われていたが、2005年には復刻版が販売されるようになり、また2002年には限定販売でアニメDVD-BOXも発売されている。
しかし、本作の再放送が自粛されているということについては、疑問が投げかけられている。実際は、再放送は2000年代まで比較的多くされていたと言われており、再放送からファンになったという声も見受けられるのだ「めくら」「土方」といった言葉がセリフもあり、地上波での再放送の際にはセリフにかなりの修正がかかっており、「ピー音だらけの奇跡の再放送」だったと言われるほどであったという。
また、原作に対しては「部落」という言葉にクレームがついたことで打ち切りとなったという事情があるようだが、現在再放送がなされないという点については、視聴者や団体からのクレームがあるという事実は確認されていないという。
さらに、発売されたDVDについてもある疑惑が持たれている。「作品の歴史的価値を重視し、現存する原版のとおり収録してあります」といった文面は、目にしたことのあるかたもおられるだろうが、実はこうした表記がついていながらも、修正やカットが施されていた例が実際に『ドラゴンボールZ』のDVD版で確認されている。
こうした前例ゆえに、『アパッチ野球軍』についても同様な処置がなされてしまっている可能性が考えられているが、初期放送の映像入手が困難であるためか比較が実現されてはおらず、あくまで疑いがあるということに留まっている。
本作が再放送を見送られている作品であるということについては、現時点では確かにそうであるものの、かつては再放送が頻繁に行なわれていたため、厳密には不正確であると言えるだろう。
このことは、差別を助長すると判断された表現が頻出したことによる自主規制が働いていたことは想像に難くない。しかしながら、差別的表現を抹消することは、不都合な歴史に目をつぶる改変そのものに他ならない。たとえ冒頭にことわりを挿入するにしても、時代背景を知る上で重要な資料の一部ともなりえる。
そうした点で見れば、むしろ現代であるからこそ一層の価値を持つ作品ではないだろうか。
【参考記事・文献】
放送禁止説について
https://apachebbfun002.hatenablog.com/entry/2018/11/17/110505
「作品の歴史的価値を重視し、現存する原版のとおり収録してあります」という言葉にどれだけの信憑性があるのか
https://apachebbfun002.hatenablog.com/entry/2018/12/26/094028
【#030】放送禁止用語連発アニメ!『アパッチ野球軍』
https://ameblo.jp/phantom1980s/entry-11219151025.html
(黒蠍けいすけ 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)