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借金のかたに乗せられる!「マグロ漁船」ブラック都市伝説は実話か?

マグロ漁船とは、その名の通りマグロを獲るための漁船だ。しかし、漁船とは言えども沖合に出るようなものではなく、多くは日本から遠く離れた海域へ行ってマグロを獲る。

一度出航したら終わるまで帰ってこない延縄(はえなわ)漁と、数ヶ月ごとに最寄りの港で休息や物資補給などを行なう一本釣り漁が主な方法であり、タンカー級の船でおよそ1年前後かけて行なわれる。

マグロ漁は、きわめて過酷な重労働である反面、高給の代名詞とも言えるような仕事とされている。また、海上という逃亡がほぼ不可能な環境下であることから、現在でも借金返済などの理由によりマグロ漁船に乗らされるといった都市伝説が古くから囁かれている。

実際、マグロ漁の過酷さは他の業種に比しても一線を画す。陸地から大きく離れた海上ということもあり、海上へ落下して死亡もしくは行方不明というリスクはきわめて高く、網などに体を引っ掻けてしまい指などの人体の一部を切断してしまうという事故のリスクと隣り合わせ、さらに病気を患っても即刻に治療を受けることもできない。

だが、その一方で高給という点については、現在疑問視もなされている。




現にマグロ漁船で稼いだ者がいることは確かであるが、それは一部のベテランに限定される話であるという。よくよく考えれば、全くの素人がマグロ漁船に乗り込んだところで役に立つか否かは火を見るより明らかであり、何より追い出すことができない状況下においては、お荷物となることは免れずデメリットの方があまりにも大きい。

マグロ漁もかつては、一般の乗り込み員クラスでも1回1000万円(漁が1回に1年かかるため年収と言っても良い)を超える報酬であった時代もあったことは事実である。しかし、現在のマグロ漁の収入は、養殖によってマグロが安価で手に入ること、海外での需要が増えたことで日本以外のマグロ漁も行なわれるようになったこと、そして肉体的・精神的にもタフな外国人労働者が増えて安い給料で雇えること、といった事情により半減しているという。

今でも、創作作品などには「借金のかたに」あるいは「一攫千金を目指して」マグロ漁船に乗る(乗らせる)といった話が描かれている。近年では、実際に借金トラブルの解決料を要求する際に「マグロ漁船に乗ってこい」と脅迫した会社社長が逮捕されるという事件も発生した。

この他にも「海へ落とし事故死として多額の保険金を得る」「乗員登録をしていない女性を性処理として乗り込ませ最後には解体され海に投げ捨てられる(マグロ女都市伝説)」などといった話も加わって語られることがあるものの、いずれも噂を域を出ていないのが現状である。

かつて実際に高給であった時代背景とその過酷さ、そして海上という孤立した環境下によって実態が見えにくいといった事情が、こうしたマグロ漁船の都市伝説を生み出したものと考えられる。近年では、深刻な船員不足にも悩まされているマグロ漁に、これら都市伝説を払拭しようと漁業団体がYouTubeなどを利用し、若者の志願者を増やしているという。

【参考記事・文献】
いま「遠洋マグロ漁師」になりたい若者が、少しずつ増えている「意外な理由」
https://gendai.media/articles/-/87221?imp=0
【マグロ漁船の女性】性処理→借金返済って実話なの?『マグロ女』の実態…
https://cherish-media.jp/posts/10096
マグロ漁船・タコ部屋の闇を暴く!今もヤクザの借金回収に使われる?
https://www.ashigin-card.jp/yakuza/
マグロ船の都市伝説にご注意
https://ameblo.jp/seifukumaru/entry-12568457155.html
マグロ漁船
https://dic.nicovideo.jp/a/%e3%83%9e%e3%82%b0%e3%83%ad%e6%bc%81%e8%88%b9
「船に乗ったら人生終わり」じゃない! 遠洋漁業団体が“悪評”払拭へ船上生活の実態発信…年収も聞いてみた
https://www.fnn.jp/articles/-/173236
【都市伝説の定番・マグロ漁船の真実】借金の返済で乗る人はいるのか? 給料は? 船の中の生活は?
https://x.gd/1xd6g

(黒蠍けいすけ 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

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