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イギリスの”失言王”と呼ばれた政治家「ボリス・ジョンソン」の放言伝説

ボリス・ジョンソンは、外務・英連邦大臣やロンドン市長、保守党党首などを歴任し、2019年7月から2022年9月まで第77代英国首相を務めた政治家である。彼はきわめて失言やスキャンダルが多い人物として知られており、「英国で最も派手な政治家」のほか「イギリスの失言王」「イギリス版トランプ」といった異名まで付けられるほどであった。

ジョンソンは、欧州議会議員であった父を持ち、ジャーナリストを経て国会議員になった。イギリスの欧州連合(EU)離脱の国民投票時は、離脱派の顔としてキャンペーンを展開していた。そんな彼の実際の発言やSNSにおける”失言”は、首相以前の編集者時代からも挙げればきりがなく、中にはきわめて差別的とも言えるようなものまであるのだ。

アメリカ大統領を含め政治家に対する評だけでも、例えば2016年のEU離脱キャンペーン当時にはオバマ大統領に対して「ケニア人の血を引いている」「大英帝国が先祖代々嫌いなのだ」だと発言し、2007年にはヒラリー・クリントンを「精神病院のサディスティックな看護師」とたとえた。また、トルコのエルドアン大統領がヤギと性交渉するという侮辱的な詩を書き、雑誌で表彰され賞金も獲得したことがあるという。

失言の中には宗教に絡むものも多く散見されており、イギリスにあるシーク教寺院を訪れた際には、インドへのスコッチ・ウィスキー輸出について話したことで、アルコールを禁じるシーク教の信者から反発がなさたり、ミャンマーへ公式訪問した際には、ミャンマーが大英帝国の植民地だった時代の詩人の詩を朗読したことで「信じられないほどの無神経」と批判されたりといった騒動を起こした。


特にイスラム教に対しては強烈な発言を繰り返しており、イスラム教を怖がる「イスラモフォビア」はイスラム教に対する自然な反応である、女性のムスリムがブルカを身に着けている様を「郵便ポスト」「銀行強盗」のようである、とコラムに書くなどして猛烈な批判を浴びることとなった。

2013年にマレーシアで開催された世界イスラム経済フォーラムの際には、イスラム教国であるマレーシアにおいて女性の大学入学が70%近いことを聞き、「結婚相手を探さなければならないからね」と発言したことでも非難された。

この他にも、2005年の選挙において「保守党に投票すれば旨の大きな妻が手に入る」などとキャンペーンで語ったり、内戦で破壊されたリビアの首都シルテを「死体を片付ければ新しいドバイになる」と発言したりと、さまざまな放言がなされている。

これら多くの発言については、ジョンソン本人からの謝罪はなされていないという。それでも、首相まで務めた彼の政治的評価は単に失墜するといったことではなく真っ二つに割れており、なおも国民から「ボリス」という愛称で呼ばれるほどに支持は熱烈なものがあったと言われている。

エリート出身であるが気取らないというスタイルや、失言とまでは至らないジョークを真剣な場でも惜しまず繰り出すことで場を明るくさせる、そういった人柄が政治家という立場以上に好感を持たれたのだろう。

【参考記事・文献】
道化師「英ボリス新首相」が何気に人気の理由トランプとは根本的に異なる部分がある?
https://toyokeizai.net/articles/-/294213
イギリス新首相ボリス・ジョンソン氏の物議を醸した発言・行動の歴史
https://www.businessinsider.jp/post-195221
アングル:毒舌ジョンソン氏に英外交トップは務まるか
https://jp.reuters.com/article/angle-boris-johnson-diplomacy-idJPKCN0ZV0P7/

(黒蠍けいすけ 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

Photo credit: UK Prime Minister on VisualHunt.com