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自然災害大国日本に伝えられる教訓「水害に関する地名」

日本は地震国と言われているが、それ以外の自然災害も非常に多い。台風や暴風雨、それに伴う洪水はもちろんのこと、列島が山々に覆われているということから、土砂崩れといった災害がこれまで幾度も起こっている。

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震とそれに伴う東日本大震災ののち、国内ではあることが広く注目されることとなった。それは災害地の「地名」であり、地名にはその土地がかつてどのような土地や土壌であったか、そしてどのような災害が発生していたかが記されているとして、いわゆる「災害地名」と呼ばれるものがクローズアップされるようになった。

大阪の「梅田」が「埋め田」であったなど、俗に「住んではいけない地名」とも称されオカルトと交えて語られることもある”地名の由来”であるが、一概にオカルトとは言い切れない部分もあるのだ。

水害を連想させる地名はいくつもあり、河川の氾濫に起因すると言われるものが多数見受けられる。都内だけでも、「渋谷」「池袋」など今では人波に溢れる地域がそうした水害に由来した地名であると言われているが、当然ながら「渋」「池」あるいは「沼」といった水に関する字によるものだけではない。

例えば「竜・龍」は、曲がりくねった河川の形状を模していると言われており、2018年の福井県の九頭竜川の決壊は記憶に新しい。愛媛県の肱(ひじ)川もこれまで幾度となく氾濫しているが、この「肱」という字も「ヒジのように屈曲している」ことに由来すると一説には言われている。また、「蛇」も河川の形状による由来のものが多いと考えられている。


この他、河川の決壊や浸食にまつわるものもあると言われており、「かま・かめ」は蒲・鎌・亀など「噛む」、「くま」は隈・熊など「曲(くま)」、「つる」は鶴・弦など「水流(つる)」、「すき・すぎ」は杉など「剥(す)ぐ」といったことを表しているという。なお、隈については「くぼんだ場所」であることや、鶴については実際の鶴が「湿地を好む」といった事象が反映されていると言われている。この他、河川が分かれる、あるいは集まるということで「合」や「又」、水が溜まる場所として「沼」「袋」「谷」なども挙げられている。

また、東北の震災の際に特に注目された大きな理由は津波被害によるところが大きい。こちらも、また「浦」「津」「江」「浜」といった海辺にまつわるものだけではない。原発などでも注目された女川(おながわ)について、「おな」とは津波を表す男浪(おな・おなみ)に由来すると言われており、福島県の小名浜(おなはま)も同様の由来による地名である。

このような災害をもとに名付けられたとされる地名は、現在でも残っているものがある一方で、合併などによって全く異なる地名になるといった形で、その本来の地名がわからなくなってしまうという意見も多く存在している。

2014年8月に発生した広島県の豪雨土砂災害では、被害地の一つ八木地区がかつて「八木蛇落地悪谷」(やぎじゃらくじあしだに)と呼ばれており、その災害の記憶が地名に残されていたとして大きく報道された。このことは宅地開発による不動産売買のため地名が改変されたのではないかといった意見も多く唱えられた。ただし、これについては一部疑問視もされており、地名の変更については「蛇落地」や「悪谷」といった地名を記す一次資料が確認されていないという。

地名がその土地の事情を反映しているというのは確かであり、長い年月を経てそれが忘れられたり、改変されたりすることによって現代に伝わらなくなってしまうという危惧は、確かに由々しきことである。自然に恵まれると同時に、自然による災害も多い国であるからこそ、こうした先人の知恵は伝え継いでいかなければならない。

【参考記事・文献】
「窪、谷、沢」がつく地名は本当に危ないのか? 震災後に注目された“災害地名”が参考にならない理由
https://bunshun.jp/articles/-/15592#goog_rewarded
活かせ「災害地名」や言い伝え
https://www.cgr.mlit.go.jp/ootagawa/chiebukuro/search/mame/No_233.html
洪水危険、土砂崩れ注意…「地名」は警告する
https://www.yomiuri.co.jp/column/japanesehistory/20220221-OYT8T50054/
広島豪雨災害:「八木蛇落地悪谷」の地名変更は江戸時代以前では
https://takanashi.hateblo.jp/entry/2014/08/28/235406

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(ナオキ・コムロ 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

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