画像『テレビマガジン特別編集 ウルトラセブン EPISODE No.1~No.49』
ウルトラセブンは、1967年から翌年まで放送された円谷プロダクション・TBS制作による特撮番組である。明確な侵略の意図を持った異星人との対決が物語の中心となった本作では、「封印された作品」の代表格とも称される幻の放送回が存在している。
その放送回とは、第12話『遊星より愛をこめて』である。
67年12月17日に放送された第12話、この回の放送で登場した異星人の名は「スペル星人」。母星であるスペル星が「スぺリウム爆弾」の実験を行なって失敗、放射能の汚染で地震が被爆したため、自分たちの血液の代わりとして地球人の血液を奪っていた異星人である。
これだけ聞くとギョっとするかもしれないが、当時は放送をしても苦情は見られず、何事もなくグッズも発売されていた。事件は、その3年後の1970年に発生した。
この年の10月に発売された『小学二年生』11月号の付録として「かいじゅうけっせんカード」が付いていた。スペル星人は、人の血を奪うという存在から元々は「吸血宇宙人」という別名がすでにあったが、この付録カードの説明文には、なんと「ひばくせい人」というあまりにストレートな肩書が付けられていた。
これを見たある女子中学生が自身の父親に相談し、その女子中学生の父親が東京都原爆被害者団体協議会の専門委員であったために、編集部へ抗議文を送ったことで事態は大きく広がっていった。
この抗議の顛末は、「被爆者を怪獣扱いした」と朝日新聞などでセンセーショナルに取り上げられ、広島・長崎の被爆者団体を経て全国規模の抗議運動にまで発展し、結果スペル星人の登場するこの第12話は、存在そのものが封印された幻の回となった。
また幻となったこの第12話は、1980年代に入ると新たな話題として浮上することとなった。
この放送回の海賊版映像がマニアの間で出回ったのである。DVDの影も形もなかった時代、VHSによりダビングされたいわゆる海賊版の録画映像は殆どが劣化したものであったが、1本10万円前後で販売されていた。
このビデオは、どこから流出したものであるかがわかっていないが、連続幼女誘拐殺人事件を起こした宮﨑勤がこのビデオを流出させたのではないかという噂が流れ、この第12話のビデオと引き換えに死体ビデオの製作を依頼されていたといった都市伝説までも浮上するに至った。
だが一方で、宮﨑勤自身が第12話のビデオを所持していたこと自体は事実であり、2023年9月には、当時学生だった頃に宮﨑から第12話のビデオを借り、その際の宮﨑から手紙も残っているという人物がSNSで発信し話題ともなった。電話でもやり取りをしたという当人によると、宮﨑は非常にもったいつけた横柄な態度であり、よほどの好条件を出さなければビデオのダビングに応じなかったという。
2024年となった現在までもこの状態は続いているが、「被爆者を怪獣扱いした」という解釈は制作意図やその内容から鑑みても想定し得るものではなく、復活を願うファンは多い。のちにこの事件の発端ともなった女子中学生の父親は、自身の投書によって表現の自由を潰してしまったと語り、付録カードのみに対する抗議ではあったものの番組自体を見ずに抗議したのは大きな問題であったと語っている。
【参考記事・文献】
ウルトラセブン第12話とスペル星人について。なぜ放送禁止に?欠番解禁は?
https://cherish-media.jp/posts/10160
遊星より愛をこめて
https://x.gd/1KZOj
宮崎勤から、ウルトラセブン12話『遊星より愛をこめて』を録画したビデオテープを借りた人の話
https://togetter.com/li/2226392
ウルトラセブン第12話「遊星より愛をこめて」が放送50年、アンヌ隊員の女優が解禁を祈るメッセージ
https://www.huffingtonpost.jp/entry/ultraseven_jp_5c5aa8dde4b0cd19aa942486
(ZENMAI 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)