1985年6月18日、悪徳商法を手口とする組織的詐欺によって、高齢者を中心に全国でおよそ2000億円近くの被害総額を出したとされる豊田商事の会長永野一男が、自宅マンションで刺殺される事件が発生。
この日、「今日逮捕」という情報を聞きつけた40名に及ぶマスコミが会長の自宅マンションに集まる中、2人組の男たちが突如現れて永野の部屋へ強行突入。わずか90秒ほどの短時間で会長は刺殺、殺害した男が「俺が犯人や」と言い放ち現行犯逮捕された。
日本史上最悪の詐欺事件として話題となっていたことや、マスコミの目の前でその詐欺の主導者とされる会長が殺害されたことで、大きな衝撃を与えた事件となった。
この事件は、犯人が現行犯で逮捕されている事件ではあるものの、解明されていない謎が今も多く残っている。
見積もっておよそ2000億円という途方もない金額を詐欺により得たと言われているが、その巨額な被害金はほとんど行方がわかっておらず、被害者のもとへ戻ったのは200億円に過ぎなかった。これほどの大金を手にしていたはずの永野も、殺害時の所持金が711円、マンションに至ってはオートロックすらない質素なものであり、遺品についてもめぼしいものは殆ど残っていなかった。
この大金の動きについては、一部の宗教法人・団体に対して資金提供がなされていたことは判明している。だがそれ以外は、全くと言っていいほどわかっておらず、暴力団や右翼関係者などへ資金が流れていったのではないかとの疑惑もあり、それに関連して多数の政治家へ資金が流れていったのではないかとも言われている。
また、犯人の男2人についても疑問が残っている。
犯人は自営業・飯田篤郎(あつろう:当時56歳)と建築作業員・矢野正計(まさかず:当時30歳)。両者は直接に被害を受けていたわけではなかったが、「知人に頼まれた」ということで犯行に及び、矢野は飯野に恩義があったということで共犯に同行したという。しかし、知人に頼まれたからと言って、人ひとりを殺害するという多大なリスクを果たして負うのかという点については、犯行動機の不透明さが指摘されている。
また、犯行の手際があまりにも短時間で手際が良いというのも不可解な点として挙げられる。このことから、事件には犯行を指示した黒幕が存在しているとも考えられており、殺害の真の動機は、行方不明となっている巨額の金の動きを知られないための口封じだったのではないかとも言われている。
マスコミに「永野が今日逮捕される」とタレコミをしたのは意図的なものであり、報道陣を集めて犯行に及ばせたのは他の関係者の口を塞ぐことも意図した見せしめであったとも考えられる。
この事件は、生放送により中継された衝撃事件として現在も語り継がれているが、その映像のインパクトだけがクローズアップされている中で、マスコミが深く追及していくような動きはあまりされなかった。前年から年をまたいで騒がれていたグリコ森永事件、8月に発生した日本航空123便墜落事故という大々的な出来事に挟まれた時期の発生が、一層の追及を困難にしてしまったと考えられる。
そして豊田商事は事件当時は社員数7000人以上、2001年に設立された”はなまるうどん”で有名な「株式会社はなまる」の設立者は、豊田商事の元幹部だったことが週刊誌で報道され話題となった。だが、他の元社員たちのその後については、その多くが不明な状態となっている。
余談ではあるが、2017年、兵庫県内に存在した30年以上、野ざらしの巨大廃墟が解体されるという報道があった。建設途中で放置されたこのホテル跡は、廃墟マニアの間では豊田商事絡みの物件だったのではないかという都市伝説が囁かれていた。不可解な謎を残した事件は、思いもよらぬ場所でも都市伝説としてその名を残している。
【参考記事・文献】
惨殺シーンをマスコミは淡々と撮影し続けた~豊田商事会長刺殺事件
https://shueisha.online/culture/4661?page=4
永野一男の生い立ち・最期(断末魔)と殺人犯人の黒幕とマンション【FOCUS画像】
https://javelinmitsu.com/naganokzuoaei/
豊田商事・永野一男殺人事件の犯人!黒幕や残党の現在も総まとめ
https://newsee-media.com/toyota-shoji#i-2
豊田商事会長刺殺事件の真相とは?永野一男や犯人&残党の現在まとめ[放送事故]
https://cherish-media.jp/posts/10573
30年以上野ざらし「巨大廃虚」解体へ マニアに人気…豊田商事絡み?都市伝説も 兵庫・豊岡
https://www.sankei.com/article/20170603-U3UVAU6LMZNUZKBJ7FEYC2BPPI/
(ナオキ・コムロ 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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