主人公にとってはさほどでもなかったのに、実際には長い時間が過ぎてしまっていた。と聞くと、日本人であれば浦島太郎の物語を思い浮かべる人が多いだろう。
世界にはこうした浦島太郎のような伝承や物語が多く見られている。特に、19世紀にアメリカの小説家ワシントン・アーヴィングによって書かれた短編小説『リップ・ヴァン・ウィンクル』は、明治における翻訳でも「新浦島」という邦題が付けられていた。
あるところに、リップ・ヴァン・ウィンクルという樵(きこり)がいた。のんきな性格をしていた彼が猟犬を連れて深い森の奥へ入り込んでいくと、彼の名前を呼ぶ声が聞こえ、そこに奇妙な格好をした背の低い男(老人)が現れた。
リップは彼に連れられて、彼の仲間達と九柱戯(9本の柱にボールをぶつけて倒す遊び)に興じ、愉快に酒を酌み交わしながら楽しんでいたが、いつの間にかグッスリと眠ってしまった。目が覚めた彼は、猟犬がおらず所持していた猟銃もボロボロになっていることに気が付いた。奇妙に思いながらも下山した彼であったが、奇妙なことに町が様変わりしており、顔を知る人もいなかったのだ。実はリップが山に入ってから、20年もの月日が経っていたのである。
この話は小説として書かれているが、元々は、オランダ移民の間に伝わっていた伝説が元になっているという。このリップを呼び寄せた男(複数いたともされる)とは一体何者であり、彼の身に何が起こっていたのだろうか。その一説として考えられているのは、彼が宇宙人によって連れ去られていたのではないかというアブダクション説である。
「ウラシマ効果」と呼ばれるものがある。これは、「光速に近い速度で移動すると、時間の流れが外部に比べて遅くなる」という、アインシュタインの相対性理論に基づいた現象であり、「超高速で宇宙空間を航行して出発点に戻ってくると、出発点にいた人は年を取るが、宇宙を航行していた人は年を取らない」という理論を言う。この効果と全く同じことを、アメリカでは「リップ・ヴァン・ウィンクル・エフェクト」と称しているのだ。
浦島太郎における考察の一つに、浦島が乗った亀は宇宙船であり、竜宮城は宇宙に存在していたというものがある。丹後風土記に伝わる浦島伝説では、竜宮城が海中ではなく天上にあることも示唆されていることからも、浦島太郎は実は宇宙旅行をしていたという説は考えられなくもないのだ。
リップ・ヴァン・ウィンクルも、このように浦島太郎と同様であるとも考えられる。しかし、その一方で浦島太郎とは異なっている部分も見られる。それは、彼を呼んだ男たちの存在だ。この小人たちは、浦島太郎における亀の役割とは少々異なっているように思える。
浦島において亀は宇宙船ということであったが、リップの男たちはむしろエイリアンだったのではないだろうか。そう考えると、リップは宇宙旅行をしたというよりも、誘拐(アブダクション)されていたのではないかとも考えられるのである。作中の描写によれば、この仲間の連中たちの挙動も奇妙な様子であり、陰気で黙り込んだままであったという。
このことからすれば、彼らは自分たちが楽しんでいるところに人間も交えようという妖精のような陽気さから連れて来たのではなく、なんらかの目的があったのではないかとも思えてしまう。
しかし、暢気な性格がリップにとっては幸いだったようだ。彼は、数少ない昔を語れる人物として慕われ、そもそもかかあ天下の恐れからも解放されたことに安堵していたという。このことは、リップの舞台となる時代がアメリカ独立戦争の時期であり、眠りから覚めたのが独立国となったことの暗示であるとも考えられている。
先述したように、浦島太郎の類話は世界各地でも確認されている。それらはリップ・ヴァン・ウィンクルも含め、宇宙人などの接近遭遇や誘拐といったものが伝承や伝説となって残っているものであるのかもしれない。
【参考記事・文献】
【アメリカ文学】リップ・ヴァン・ウィンクル【浦島太郎類話】
https://historia-1945.blogspot.com/2013/11/blog-post_9.html
浦島太郎伝説は宇宙旅行に行った話だった!?
https://jyouhonet.com/urashimataro-utyuu
(黒蠍けいすけ 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
画像 ウィキペディアより引用
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