近年観光や旅行の分野で注目を集めているジャンルにオカルトツアーがある。
心霊スポットや幽霊伝説の残る場所、UFO事件の現場やUMAが出た場所等に実際に足を運ぶというもので、特に心霊スポットを巡るツアーでは曰く付きの場所に赴いた際に出てくる不法侵入や怪我やなどのトラブルに巻き込まれる可能性が低くなるため、オカルト好きを中心に人気が高まっている。だが、海外ではすでに心霊ツアーは既に過当競争に入っているようだ。
先日、全米各都市でゴースト・ツアーを営む団体が、全国展開している旅行会社によるツアーに反発、テレビ番組で現状を訴えて注目を集めた。今回テキサス州のテレビ番組に、オースティン市でオカルトツアーやイベントを運営するジェニーン・プルーマー氏が出演。彼女は全国規模のフランチャイズ・チェーンが、地元で定着しているツアーと驚くほど似た名前と内容で営業することが頻繁にあると主張。
この報告を受けて、全米各地にいる彼女の同僚の多くも同じことを訴えた。テキサス州ガルベストンで営業しているジン・キール氏は、「私の会社と彼らの会社を混同して電話をかけてくる人がいます」と嘆く。サンディエゴにある別の企業は、この論争を取り上げたマサチューセッツ州の新聞の取材に対し「彼らの顧客が私たちのミーティング場所に現れて私たちと彼らの参加するグループを間違えたり、その逆のパターンもありました」と語っている。
またボルティモアで長年ゴーストツアーを営業している企業は、件のフランチャイズ店が従来地元企業が提供しているものと酷似した名前のツアーを開始したときは、地元で長年営業してきたイベント企業のオーナーが実際に同社に法的書簡を送り、「あなた方の事業計画は既存の事業の尻馬に乗っている。消費者を混乱させ、自分たちのツアーに申し込ませようと誘導しているのは明らかである」と主張する事態に発展。
これに対し、同チェーンの弁護士は「略奪的な行為には一切関与していない」とし、同社のツアー名ら「単なる一般的なもの」であるため、混乱を引き起こすようなものではないと主張し返すという事態に発展している。
この問題はブランド面だけでなく、大企業がゴースト・ツアーの内容を盗用している点にもあると述べるイベント企業もある。
「彼らは私たちの話を盗用することをためらいません」と、フォースワースで心霊ツアーを運営しているデビッド・ベスグローブ氏は語る。またワシントンD.C.で幽霊ツアーを開催しているクリストファー・ロビン氏も同様の主張をしている。
オースティン・ゴースト・ツアーズを運営しているジョン・マーベリック氏は、「建物の外に立っている私達のツアーのそばを通り過ぎた大企業のツアー・ガイドが、私自身が個人的に心霊スポットで体験したことを話していた」と憤慨しながら語っていた。
ツアー・オペレーターの中には、自分たちが長年培ってきた地元ならではの味わいを部外者が侵害することに難色を示している者もいるという。こちらはオカルト関係だけでなく、地域に残る歴史的な場所や伝説に根ざしたツアーを提供している運営会社が主に主張しているようだ。
いずれにせよ、全米各地のゴースト・ツアー会社は現状を重く見ており、企業連帯を行うよう互いに呼び掛けている。また、今は特に需要の高まるハロウィーン・シーズンでもあることから、ゴーストツアーへの参加を考えている人々に「地元企業のツアーを選ぶ」よう訴えている。
海外のオカルト業界で発生した前代未聞の企業間闘争はどのような決着を見るのだろうか。
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