自分が一人だと確信していたのに、部屋の中に”不気味な存在”の感覚を感じたことがある人は、そのようなことを認めたくないことであるかもしれない。
経験を処理するのに役立つ説明がない限り、ほとんどの人間は自分に何が起こったかを把握するのに苦労するだろう。しかし現在の研究では、この神妙な体験は心と体そして両者の関係の科学的モデルを用いて、理解できるものであることが示されている。
こうしたテーマに関する最も大規模な研究の一つは、1894年に行なわれたソサイアティ・フォー・サイキカル・リサーチ(SPR)では、英国、米国、欧州の17,00人以上を対象とした調査「幻覚の国勢調査 Census of Hallucinations」を発表した。この調査は、”死を予告する訪問”がどれだけ一般的であるかを理解することを目的としていた。
SPRは、そのような経験は偶然ではありえないほど頻繁に起きていると結論付けた。1886年、SPRは『生きている者の幻影 Phantasms of the Living』を出版した。この著書には、701件のテレパシー、予感、その他の異常な現象が含まれていた。
当時、幻影は非科学的だと批判された。国勢調査はそれほど懐疑的な内容ではなかったが、それでも回答バイアスに悩まされた。しかし、そのような経験は世界中で生き続けており、現代科学はそれらを理解するためのバイアスを提供している。
SPRが収集した多くは、睡眠の境界で起こる幻覚体験であるヒプナゴジアのようなものであった。19世紀に記録されたいくつかの宗教的経験は、入眠時に根拠があることが示唆されている。“存在の感覚”は特に睡眠麻痺と強い関連性があり、成人の約7%が障害に1回以上経験している。睡眠麻痺では、筋肉は眠ったままであるが心は覚醒している。研究によると、睡眠麻痺の人の50%異常が“存在”に遭遇したと報告している。
なぜ麻痺のような経験が存在感を生み出すのだろうか。2007年、睡眠研究者のJ・アレン・チェインとトッド・ジラードは、麻痺して弱った状態で目を覚ますと、本能によって脅威を感じ、心がそのギャップを埋めると主張した。もし我々が獲物なら、捕食者がいるに違いない、というように。しかも、これは臨死体験、死別などでも報告されており、睡眠に特異的な現象ではない可能性も示唆されている。
神経学的なケーススタディや脳死激実験から、“存在”は身体的な合図によって誘発されることがわかっている。例えば、2006年に神経科医シャハール・アージーらは、左側頭頭頂接合部の脳に電気刺激されている女性が体験した「影の人物」を作り出すことに成功した。この人物は、女性の体を反映しているように見え、左側頭頭頂接合部が我々の感覚と身体に関する情報を組み合わせていることもわかった。
2014年に行なわれた一連の実験でも、健康な人間であってもいわゆる「感覚的な期待」を壊すことが存在感を誘発する可能性のあることが示唆された。研究者らが用いた方法は、真後ろにいるロボットと動きを同期(シンクロ)させることで、あたかも自分の背中に触れているかのように錯覚させるというものであった。
私たちの脳は、私たちがその感覚を生み出していると推測することで同期を理解している。そして、ロボットのタッチがわずかにずれて同期が崩れると、人は突然機械の中に幽霊がいるように感じてしまう。状況に対する感覚的な期待を変えることは、幻覚のようなものを誘発するのだ。この理論は、睡眠麻痺のような状況にも適応できる。
私たちの体や感覚に関する通常の情報は、そのような状況下ではすべて混乱してしまうため、そこに何か「他のもの」が宿っていると感じるかもしれないが、おそらく驚くことではない。
2022年の研究では、臨床記録、スピリチュアル実践、耐久スポーツから存在の類似性を追跡しようとした。これらすべての状況において、存在感の多くは非常によく似ていた。例えば、ある人は自分の後ろに何かがいると感じていた。睡眠関連の存在は3つのグループすべてで説明されたが、悲しみや死別など感情的要因によって引き起こされた存在でも同様であった。
研究はまだまだ始まったばかりである。
(にぅま 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
画像 Cheangchai / Adobe stock
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