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「折口信夫」古代から現代へ 日本文化の本質を追究し続けた民俗学者

折口信夫(おりぐちしのぶ)は、明治から昭和初期にかけての民俗学者・国文学者であり、釈超空(しゃくちょうくう)の号としては詩人・歌人としても活躍した人物である。広範に及ぶ彼の独特な学術体系は『折口学』と称されている。

古典・古代研究をベースとしたその研究スタイルは、神と人間、祖先と人間といった関係や日本の言語の中から現代に残る日本文化を解きほぐすといった様式を用いている。その上で、神や霊魂といったものも尊重して追究し、特に他界や異郷から来訪する神や霊的存在の本質を読み解くという「マレビト」のほか、「ヨリシロ」「ムスビ」「ミコトモチ」などといった彼の学術思想にとって重要とされる術語(ターム)を多く残した。

彼の研究の大きな特徴は、先の「マレビト」などの術語のような前提となる概念を想定し、それが古代から現代に及ぶまで、それぞれの時代で発達してきた芸能や信仰などへ、どのように影響を与え展開されてきたかを導く演繹法的なものであることだろう。

徹底した現地調査によって各地の習俗や民話などを蒐集しそれらを比較検証するという、同時代の民俗学者柳田國男のいわば帰納法的なスタイルとは対照的と言える。両者は生涯を通じて敬愛と反発、確執と競合という間柄であり、「マレビト」についての論文に対し柳田國男が掲載を拒否した話は有名である。




また彼には、釈超空名義によって執筆された、『死者の書』という生前唯一の小説がある。古代からの信仰が仏教へ移行を始める8世紀が舞台となるこの小説では、彼の宗教観ひいては神道観が強く反映されている。非常に難解な内容として知られている著作ではあるが、そこには一貫した日本の普遍的な信仰や振る舞いを追究する思想が背景にあっただろう。

日本人にとって神はどのような存在か、魂はいかに人対人との間で関わるのか、日本文化はどうあるべきなのか。民俗学にとって重要な概念や様式を多く生み出した彼は、天皇の意義にも言及し、時に過激な保守主義とも見なされた。しかしその思想には、どんなに外の文化を取り入れようとも日本人としての精神は失ってはいけないという思いが揺るぎない主軸となっていたことは確かだろう。

戦後発表された文章の一節には、「もう此上、日本の國をわるくしては、ならぬのである。」という彼の言葉が述べられている。

【参考記事・文献】
・上野誠『折口信夫「まれびと」の発見』
・斎藤英喜『折口信夫』

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(にぅま 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

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