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「八百比丘尼」の不老長寿・・・タブーを犯した罰だった?!

八百比丘尼は、人魚の肉を食したことで不老長寿となり、その後尼(出家した女性のこと、比丘尼)として諸国を巡礼した娘である。

日本各地に伝説が残っており、福井県の小浜市には八百比丘尼を祀る社や入定したと言われる洞窟も存在している。いつ頃に生まれたかについては、大化から大同(645~810年)のあいだ、雄略天皇12年(468年)など諸説ある。

八百比丘尼の伝説で、大まかに語られるあらすじは以下の通り。

ある時、長者が村人たちとともに庄屋の家へ夕食に招かれる。その夕食は、網にかかった人魚の肉を賞味するというものであったが、気味悪がり誰も食べたがらなかった。村人たちは話し合った末、食べるふりをして持ち帰り道端へ捨てることにしたのだが、長者はそのまま持ち帰ってしまった。




家に帰り人魚の肉を隠した長者だが、この肉を娘が見つけて盗み食いしてしまい、以来娘は年を取らず何百年経っても若い姿のままであった。夫や自分の父を含め、自分の知る周りの人たちに次々と先立たれてしまうことに世の無常を悟った末に尼となって諸国をめぐり、最後は若狭の地で入定したという。

伝承によっては、八百比丘尼が食したのは珍しい魚など特殊な食べ物だと語るものもある。中国でも、太歳(星の神の化身で地中を移動すると言われている)を食らうと不老不死になるという伝説がある。不可思議なものを食することで超人的な生命力を持つという言い伝えは、人々を惹きつけるものがあるのだろう。

不老不死・不老長寿が古くからある人類の願望の一つであるのは確かだ。だが、八百比丘尼の伝説は、それとは裏腹に孤独で悲惨なものを感じずにはいられない。

むしろ八百比丘尼が不老長寿となったのは、人魚の肉を食するというある種のタブーを犯したことへの罰だとする解釈もあるくらいだ。自分の知る人たちが、自分よりも先に老いて死んでいくという様を見続けるのは、あまりにも厳しい苦行とも言える。

不老長寿が本当に幸せなことであるか、八百比丘尼は身をもってそれを問いかけているのかもしれない。

(にぅま 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

Leandro De CarvalhoによるPixabayからの画像