1920年代、南アフリカの海水浴場にいた海水浴客達が、2頭のシャチが謎の巨大生物と格闘している所が目撃された。その生物はかなりの巨体で全身が白く、長い鼻らしき器官を攻撃してくるシャチに向かって何度も振り下ろしていたという。そして後日、近隣の海岸にシャチと格闘していた件の生物らしき巨大な死体が打ち上げられた。
死体の大きさは全長15メートルほど、顔にあった長い鼻のような器官は長さ1.5メートル、直径30センチ。アザラシに似た大きなヒレがあり、尾はロブスターのような扇型で3メートルほどだったという。巨大な全身は20センチほどの長く白い毛で覆われており、全身から血液が抜き取られた状態で漂着していたという。
この未確認生物は、目撃証言や死体でも特に目立っていた部分の「象に似た長い鼻」から、象の鼻を意味する「トランク (trunk)」をもじって「トランコ (trunko) 」と名付けられた。大勢の目撃証言と貴重な死体が存在したにもかかわらず、さして調査されることもなく死体も最終的には波にさらわれて消えてしまったという。なお、近年になって発見されたトランコの死体を収めた写真とされるものが、記事の画像である。今のところ、トランコが姿を見せた事例はこの一件だけである。
このトランコの正体について、1996年に隠棲動物学者カール・シューカー氏が「トランコの死体とされるものは単なるグロブスターである」という説をたてた。クジラなどの大型生物の死骸から脂肪の塊が分離すると、波にさらわれていくうちに表面の繊維が毛のように見える状態になって漂着することがある。目撃された動物と見た目が似ており、漂着するタイミングも近かったので死体だとみなされたのではないだろうか、とされたのだ。
しかし、トランコの正体がグロブスターだとすると、多くの人物が目撃した生きている姿との説明がつかない。シャチがグロブスターに体当りして遊んでいる所を誤認したのだ、とする説もあるが、シャチは必要のない狩りや戦闘は極力避ける習性があるため、全く動かない脂肪の塊でシャチが遊ぶとは考えづらい。
ということは、やはりトランコは全く未知の巨大哺乳類だったのではないだろうか。