50年の時を超えて描写が現実のものとなった小説「ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語」





日々様々な話を生み出している作家やアーティストらは、時に現実と創作の垣根を飛び越えるような作品を世に出すことがある。

多数の恐怖小説を執筆し、世界初の推理小説「モルグ街の殺人」を世に出したことから「推理小説の父」ともいわれる小説家、エドガー・アラン・ポー。彼が1838年に書いた小説に「ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語」というものがある。

表題のアーサー・ゴードン・ピムという人物が南氷洋での冒険を本にして出版するため、親友の乗る船に密航する形でついていく事に。しかし、途中で船員たちが反乱を起こし、乗組員は彼らを含めて4人だけに。さらに嵐が彼らを襲い、漂流の果てに食料が底を尽きた彼らはくじを引いて一人を殺害、その肉を食って生き延びる事を決める。




くじを引き当てたのは反乱を起こした船員の一人でもあったリチャード・パーカーという人物だった。その後も漂流を続けた彼らは後にイギリス船に救助され、ピム達は人食いの原住民や南極の恐ろしい環境をを目の当たりにしながら、極点を目指そうとする。

謎の自殺を遂げたピムの手記、という体裁をとっているため、この小説には明白な結末が存在していない。そのため、この小説の続編や完結編、影響を受けた作品などが多く世に出ている。

さて、この小説が世に出てから46年後、ある不気味な事件が起きた。とある船が難破し、ボートで脱出した4人の男性が実際に一人を殺して食料にした、という小説の筋書きそのままの事件だったのである。しかも、その殺害された男性も船室の給仕でリチャード・パーカーという名前だったのだ。




1884年、この事件の裁判が行われた際にポーの小説との関係性が取りざたされたのだが、彼らは教育水準が極めて低く、ポーの原作どころか彼の名前すら知らない状態だったという。

果たして、この奇妙なシンクロニシティは何だったのだろうか。ポーは未来に起きる不幸な事件をかいま見て、そこから小説を書き上げたとでも言うのだろうか。

(田中尚 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

画像©Edwin H. Manchester – LoC “Famous People” collection

 

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