職人たちと社長は、酒をかっくらった。若い者も全然気にしてない。昼間の疲れもあってか、酒量もどんどん増えていく。全員が酩酊する中、ひとり、社長だけ奇妙な足音を聞いていた。
「ん? なんだ」
耳を澄ます社長。すると、確かに音が聞こえる。
「パタパタパタパタ」
何者かが廊下を走っていく。小さな足音だ、子供なのだろうか。恐怖に顔を引きつらせ、社長が叫んだ。
「誰だ!」
社長は背後に広がる廊下の方を振り返ったが誰もいない。
「おかしいな、まぁ寝ちまえば問題ないだろう」
社長は、疑問に思ったものの、他の連中は酒に酔っていてまったく気にしていない。だが、社長の耳にはその足音がこびりついて離れなかった。
「気持ち悪いな、とにかく寝るか」
社長が促すと、全員がごろりと横になった。一同が静まりかえると、足音が鮮明になった。
「バタ、バタ、バタ、バタ」
先程より、やや音が大きい。
「やっぱり、聞こえる。これは気のせいじゃない」
社長は確信した。他の連中も、一人づつ酔いが覚めていく。
「あの足音はなんだ」
「誰かが廃屋の廊下を走ってるぞ」
全員が足跡を確かに聞いた。
「バタ! バタ! バタ! バタ!」
音が更に大きくなった。
※続く
(監修:山口敏太郎 ミステリーニュースステーション・アトラス編集部)
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