昭和の芸能事件簿「津川雅彦・朝丘雪路長女誘拐事件」

舞踏家・女優として活躍していた朝丘雪路さんが2018年4月27日、アルツハイマー型認知症のため82歳で死去していたことが発表された。朝丘さんは数年前からこの病気を患っていて4年前から芸能活動を休止していた。この訃報に対し芸能界では悲しみの声が相次いでいる。

さて、朝丘さんと夫の津川雅彦の間には、2018年現在、女優として活動している長女(真由子)がいるのだが、この3人はかつて日本の芸能史に残る一大事件に巻き込まれた過去がある。

それは、「津川雅彦長女誘拐事件」である。




1974年8月15日午前3時頃、東京都世田谷区にある津川の自宅から当時生後5ヶ月の娘・真由子が侵入してきた若い男に連れ去れられるという事件があった。この時、真由子は子供部屋で寝ていて、彼女の近くには津川家の雇っている家政婦も一緒に寝ていたのだが、家政婦が誘拐犯を津川本人と見間違えたため真由子の誘拐に気づかなかったという。

娘の誘拐に気づいた津川はすぐに世田谷署へ連絡。機動捜査隊が津川家に張り込んだ。するとすぐに犯人を名乗る男から電話がかかり現金500万円を要求してきた。津川は警察の指示に従い当日に150万円を指定の口座に振り込み、引き出しのあったとされる現金自動預け払い機(ATM)から犯人を割り出し、誘拐から41時間後に真由子ちゃんを誘拐した犯人は逮捕された。

真由子は生後5ヶ月の乳児だったために命の危険もあったが、誘拐犯は自身の妻に「友人の子供を預かってきた」と説明し世話をさせたために無事であったという。

なお、誘拐犯の男は当初、別の芸能人(佐川満男・伊東ゆかり夫妻)の娘を狙っていたが住所がわからず、同じ家族構成の津川・朝丘夫妻へとターゲットを切り替えたという。




ふたりはこの誘拐事件に強いショックを受け、夫妻の口から本誘拐事件のことは話す事はほとんどなかったが、津川はこの事件をきっかけに「世界一の父親になってやろう」と思い立ち、おもちゃ会社「グランパパ」の経営に乗り出し、父のおもちゃで育った真由子は成長し、現在は津川が代表を勤める芸能プロダクション所属の女優として活躍している。

両者とも子息子女だったために芸能界一のセレブカップルとして有名だった津川夫妻。誘拐事件をはじめ長年に渡る闘病など苦労を乗り越えての、まさにおしどり夫婦だったことが偲ばれる。

改めて朝丘雪路さんのご冥福をお祈りしたい。

(文:穂積昭雪  ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

画像『恋娘―パパを育ててくれた君へ

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