海外の著名な都市伝説に「生放送中に自殺した女性キャスター」という話がある。
これは1974年7月15日の早朝、アメリカのフロリダ州ABC系のサタソタ局の報道番組「サンコースト・ダイジェスト」という報道番組で司会を担当する美人キャスターのクリスティーン・チュバックが生放送中に拳銃自殺してしまった事件を指す。
クリスティーンは「我がチャンネルはありのままの情報をお届けしています。今から私は本邦初公開となる、自殺の瞬間をお見せします」(※諸説アリ)と視聴者へと語りかけ、隠し持っていた拳銃を自身の側頭部に銃口を当て、躊躇することなく引き金を引いて床に崩れ落ちた。
その一部始終はフロリダ州全域に生放送され、もちろん番組は中断。本事件は生放送中に司会が死亡するという「史上最悪の放送事故」として世界に広まった。
(なお、テレビ局が一部始終を撮影したフィルムは警察が押収したといわれ、現在も出回っていない。しかし現在は様々な動画サイトから家庭用VCRで録画したと思われる画質のあまりよくないクリップを探すことは可能である。)
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日本では遠く離れた海外の事件という事情もあり、若い都市伝説ファンの間で広まったのはネット文化が発達した21世紀以降のようであるが、事件が発生した1974年には小さい記事ながらも日本の新聞社数紙がこの事件を取り上げていた。
朝日新聞では7月16日の朝刊にて「テレビ番組で自殺を実演」という見出しでクリスティーンの顔写真とともに事件のあらましを掲載。概要は件の通りだが、独自情報として、クリスティーンは自殺の間際、自分が書いたニュース原稿を第三者に託していたことを取り上げている。
その内容というのが「7月15日、クリスティーン・チュバック記者が生放送で拳銃自殺を図りました。同記者はすぐサラソタ記念病院に収容されたが、重体」というもので、この原稿を第三者に委託した時点ではクリスティーンは死ぬつもりはなかったようで、あくまで重体となることを目論んでいたようだ。
クリスティーンが本当に自殺するつもりがあったのかどうかは、今となっては藪の中ではあるが、海外の放送事故を当時の日本国内の新聞媒体がどう扱っていたのかを示す貴重な資料といえそうだ。
(文:穂積昭雪 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)