それから2、3日して、Kさんからの連絡がはいった。なんでも、Kさんの父親の知り合いにその手の話に詳しい人物がいるので、絵を持って会いにいった方が良いとのことだった。
すぐにFさんはその人物に会いに行くことにした。3枚の絵はまとめてタオルで包み、4枚目の絵はそれに収まらなかったので別のタオルでくるみリュックにしまい込んだ。そして、慌ただしく部屋を出て駅へと向かった。
その人物は千葉県の外房のある場所に住んでいると聞かされていた。電車を乗り継ぎその場所へと向かうFさん。こうしている感にも誰かが死ぬのではないかという考えが頭をもたげ、気が狂いそうだった。
教えられた駅で降り、そこからはタクシーで行くしかない。その場所をタクシーの運転手に伝えると、ひどく嫌な顔をされたが、もうそんな事にいちいち動揺していられなかった。
1時間ほど行った山の中でタクシーは停車した。Fさんは寺か神社のような場所を想像していたのだが、そこにあったのはトタン屋根のみずぼらしい一軒家であった。逃げるようにその場を去るタクシーを尻目に、Fさんはその家の中に恐る恐る入っていった。
ガタガタと音の鳴る安普請の引き戸を開け、玄関に入った。そして、「ごめんください」と声をかけた。しかし、返事はない。留守にしているのだろうかと思い、どうしたものかと考えていると、「上がれ!」という大きな声が聞こえてきた。
その声に従いFさんは玄関を上がった。
廊下を通り部屋に入ると、ガリガリに痩せた男がいた。髪の毛はボサボサでひどく汚い身なりで体臭が漂ってきそうな風体をしていた。
「こ、こんにちは、実は・・・」本当に大丈夫なんだろうかと思いながら、事情を説明しようとするFさんに、男は「絵見せろ」とぶっきらぼうに言った。
Fさんがまずリュックから3枚の絵を包んだタオルを取り出そうとすると、男はそれを奪うように取りあげ、床の上に広げはじめた。(※続く)
(山口敏太郎 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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