長崎県壱岐市には不思議な伝説のある無人島が存在する。それが「辰の島」だ。
壱岐勝浦港から船で10分程で到着でき、海水浴客や釣り人らが訪れる島なのだが、地元の人々には昔から「島の奥には足を踏み入れてはいけない」とする言い伝えがあるという。
それほど離れた場所にある島ではないので、昔から人が立ち入ってはいた。だがある時、島の奥にある「剣の池」という池の周辺で壱岐の人々が薪拾いをしていると、彼らの前に巨大な牛が姿を現した。牛は人々に木を伐られると住み処が無くなってしまうので立ち入らないように告げて去ったという。
他にも辰の島と「剣の池」には不思議な伝説が残っている。
昔、辰の島には海人族を率いていたカザハヤ王とその宮殿があった。後に蛮族によってカザハヤ王は滅ぼされてしまったが、彼の財宝は剣の池に沈んでいるそうなのだ。だが、欲を抱いてこの池に立ち入ってはならない。財宝を求めてやって来た人が池を覗くと、水面にその人が求めるものが写る。それに引かれて池に手を入れると、そのまま引きずり込まれてしまうというのだ。
いずれも荒唐無稽に思えるが、これらの伝説はあながち作り話ではないのではないかという話もある。
島にある神社の近くで過去に小学生が潰れた小判を発見しており、過去に何者かが拠点として使っていたのではないかとされているからだ。人語を喋り、警告してきた巨大な牛も実際にはそこに住んでいた人々だったのかもしれない。
辰の島は数々の伝説を抱えたまま、今も静かに佇んでいる。
(加藤史規 山口敏太郎事務所 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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