先日、アトラスではウズベキスタンのフェルガナ盆地の洞窟内で発見された謎多き壁画を紹介した。
1937年に発見され、鑑定の結果紀元前2000年に描かれたらしい事が判明したのだが、その図案は他の遺跡のものとは一線を画している。幾何学的な模様の地面に手にディスク、口にインカムのようなものを着けた異形の人物、そして背後には2本のアンテナがついたヘルメットにスーツを着こんだ宇宙飛行士のような人と、楕円形のUFOらしきものまで描かれている。
宇宙人を描いたのではないかとする壁画は他にも存在しているが、いずれも素朴なタッチが多く、ここまで細かいものは珍しい。果たしてこれは本当に古代人が描いたものだったのだろうか?
この壁画は世に出てから多くの人が検証を行ってきていた。壁画は超古代文明や古代の地球に宇宙人が来ていたという説で有名なエーリッヒ・フォン・デニケンのベストセラーになった著作で紹介されて広く知られるようになった。
しかし、その本では壁画を接写したとされる白黒写真しか存在しておらず、洞窟内でどのような状態で描かれていたのか等が解るものは何もない。また、初出は前述の通り白黒であり、現在ネットでも確認できる色あせた茶色のカラー写真は何者かによって近年加工されたものなのだ。
では、「フェルガナ洞窟の宇宙人壁画」はどこから来たものなのか。
その答えとなるのがこの見開きページだ。ロシア語で見出しが書かれた雑誌には壁画と全く同じ、しかしペンで描かれ丁寧な点描が施されたイラストが掲載されている。
これは、かつてロシアで1997年まで発行されていた情報誌Spoutnikの特集見開きページなのだ。1967年6月に発行された第2号の106~107ページに描かれており、隅を見るとイラストを描いた人物のサインである「A. Brousnlov」の文字も確認できる。
この「LES VOYAGEURS DU COSMOS」とされた記事では、フェルガナ洞窟で見つかった壁画を紹介し、イラストレーターが記事本文からイメージを膨らませて描いた完全な創作だったのだ。
だが、あまりにも衝撃的な絵とタイトルだったためか、やがてイラストレーターのイメージイラストが洞窟内に描かれていた壁画そのものと誤認され、本物らしく作者のサインの部分をトリミングしわざと不鮮明な画像が掲載され、「宇宙人を描いた謎の壁画」が誕生することとなったのである。
(飯山俊樹 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)