皆様は左脳と右脳、どちらがよりクリエイティブだと考えるだろうか。
恐らく一般的には、右脳のほうがよりクリエイティブだと信じられてきた。「左脳は思考や論理を司り、右脳は完成・感覚を司る」という内容は、なんとなく聞いたことのある人も多いのではないだろうか。
しかし最近の研究では、クリエイティブな思考には右脳だけが重要視されるわけではないことがわかった。大事なことは、右脳と左脳の連結だという。
どんな仕事だろうと、創造性は必要だ。よって「クリエイティブな人の脳」で何が起きているのか、関心の高い人も多いだろう。
今回は、そんな注目度の高い研究について詳しくご紹介したいと思う。
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■脳における右脳・左脳の役割
では、脳における右脳と左脳の役割とは何なのだろうか。
脳は大脳・間脳・中脳・小脳・延髄の5つの部分で構成されている。そして大脳は左右2つに分かれており、これらのそれぞれの部分が、生命を維持し、生活を続けていくために欠かせない役割を分担している。
5つの部分の中でも、高度な精神活動に関係するのは大脳だ。大脳が発達しているほど高度な精神活動ができる。ヒトの大脳は、生物の中でいちばん発達しているといわれているくらいだ。
大脳は、各部分がニューロンと呼ばれる神経のヒモで連結されている。
この連結が複雑になればなるほど精神活動がハイレベルになることが分かっている。
大脳のどの部分が、どのような精神活動に関係しているのかについては、これまで多くの研究が重ねられてきた。それが、恐らく我々が共通認識として抱いているものだ。
右脳は感情や感性、直感などのアナログ的な思考に関係しており、左脳は言語や計算、論理などのデジタル的な思考に関係していることがわかった。
こうしたことから当然の帰結として、クリエイティブな思考は右脳が担当するのだろう、と思われていたのだ。
■実験結果は、「左右の連結」が不可欠
デューク大学とパドヴァ大学の研究チームは、健常な20代前半の被験者たちに、次のようなテストをさせた。
「5分間で新しいデザインを創り、ありふれた日用品の新たな利用方法を考える」といった、創造性を評価するための問題だ。
そして、問題を解いているときの大脳の内側の白質部分の68カ所の働きを調べた。
ここで集計したデータをもとに成績順に被験者たちを並べ、上位15パーセントと下位15パーセントを比較した。
最終的に脳のどこに差異が出たかというと、興味深い結果が出た。
上位15パーセントの人々は、右脳と左脳との連結、とくに前頭葉の部分の連結が複雑に働いていたのだ。
この実験の研究者の1人は、「右脳と左脳の連結が複雑かどうかを調べれば、その人がクリエイティブかどうか分かります」と話している。
そして、「われわれは、次は、IQとクリエイティブの関係を研究する予定です」と次の計画を述べている。
■クリエイティブな思考とは?情報の相補性
では、どうすればクリエイティブな思考ができるのだろうか?
例えば、有名なブレインストーミングを生み出したアレックス・オズボーンは、次の9つのルールを作った。
・別なことに利用せよ
・アイデアを借りよ
・大きくしてみよ
・小さくしてみよ
・変更してみよ
・代用してみよ
・入れ換えてみよ
・反対にしてみよ
言われてみれば、先のブレーン・ストーミングやカードをグループごとにまとめていくKJ法などにしても、いずれも感覚的なことや言語や論理的な情報の「連結」、複合が大切になってくる。
論理と感覚、どちらか一方でも創造性は磨かれない。自分と相性のよい方法を見つけて実践するのがクリエイティブな思考の第一歩だろう。
■クリエイティブな人間になるためには
▲1936年『モダン・タイムス』有名シーンの一つ
それでは、右脳と左脳の連結が単純な人はクリエイティブではないのだろうか?
これは逆の発想で、クリエイティブなことを考えれば考えるほど連結が複雑になると考えたほうが良いだろう。
チャップリンの映画『モダン・タイムス』の中で、チャップリンがほんの些細なことでデモの指導者と間違われ、投獄されてしまうシーンがある。この「ほんの些細な間違い」を考えるのに、チャップリンは半年かかったそうだ。
あくまで映画中では、自然な流れで、チャップリン映画らしいユーモアのあるシーンだ。
しかしチャップリンは、このシーンをクリエイトするのに半年かかったという。チャップリンですら一つのシーンで半年かかるのだ。
簡単に「左脳右脳の連結」を意識するといっても、一朝一夕でできるものではない。やはり日常の些細な出来事から、視座の転換を試みることが大事なのだろう。
(不思議.NET 編集部)