箱男という怪人を皆さんはご存じであろうか。
東海地方の某町において、昭和のひところ、女性たちを襲い続けたと言われている存在である。頭から箱を被り、町中に出没する謎の人物で、数々の怪異を行うという。
電車が行きかう瞬間だけ、悠然と踏み切りで立ち尽くしていたり、真夜中の海辺でずぶ濡れのまま徘徊したりするという。
箱男は、顔替わりの段ボールをぶるぶる震わせながら、あちこちにその残像を刻んだ。まるで、悲しい思い出のように、彼はおぼろげな姿を現したのだ。
「あの箱男って、いったい何が目的なんだろう」
表情の見えない男は、亡霊のように彷徨い続け、不気味な憶測を呼んだ。
ある者は、こう言った。
「箱男は頭部に酷い火傷を負っており、それを隠し、密かに社会に復讐する機会を伺っているのだ」
また他の者は、こう主張した。
「箱男は、既に死者なのだ。箱に詰められて遺棄された胎児の怨念が、箱男を生んだのだ」
箱男はまるで、町の負の側面を凝縮した存在であった。箱男の奇行は、人々の注目の的となり、小さな町は彼の一挙手一投足に振り回されるようになった。
箱男は元々小説のキャラクターである。
だから、当初町の人は、小説に影響を受けた人のパフォーマンスだと思っていた。だが、まったく実体のつかめない箱男は次第に不気味な存在となっていった。
この「箱男」の都市伝説は幾つかのパターンが存在する。次回以降はより詳細な「箱男」の伝説を紹介していきたい。
(山口敏太郎 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)