妖怪

山口敏太郎の体験談 怪人「10円ちょうだいおじさん」

 今回は妖怪の話ではない。徳島の名物親父の話をしたいと思う。

 私が小学生の頃だから 昭和40年代~50年代初頭にかけての話だ。新町辺りをチャリで仲間とうろついていると、必ずと言っていいほど「10円ちょうだいおじさん」に出会ったものだ。

 おじさんのファッションはなかなかイカしていた。坊主頭に、スカート、そして謎のゼッケンをつけている。大概の大人はおじさんを怪しむが、子供たちには異様に人気があった。

 またゼッケンには謎の文字が書いてあった。

 ≪10円ちょうーだい≫≪天皇制反対≫

 なんの脈絡もない二つのキャッチである。シュールすぎる。おじさんはある時代、間違いなく徳島の風景であったと想う。おじさんにはいろんな噂があった。

 「実は大金持ち」
 「東大を優秀な成績で出ている」などなど。




 後年、某タウン誌に「10円ちょうだいおじさん」は二人いたという記事が踊った。私が見たおじさんはどっちのおじさんだったのであろうか。まあそんな事はどうでもよい。町の異人(まれびと)を初めて見たあの思い出は今も変わらない。

 久々にあのおじさんに会いたいものだ。

(山口敏太郎 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)」

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