今から約30年前、まるで本物の推理小説やサスペンスドラマのような殺人事件が起き、社会を騒がせた。
1986年5月20日、沖縄・石垣島のホテルにて一人の女性が死亡した。女性は夫や友人と3人で旅行に来ていたRさん、死因は心筋梗塞とされたが、多量の発汗や悪寒、手足の麻痺等不自然な点も多かった。
5年後、Rさんの夫である神谷力が、勤めていた会社の横領容疑で逮捕された際に妻の変死に関わることが浮上してきたのだった。
Rさんは夫が受取人の生命保険に加入していたが、4社合わせて1億8千万と非常に高額な金額になっていた。Rさんの死因に不明な点もあって保険会社側は支払いを保留にしていたのだが、これらを踏まえて警察は神谷力が保険金目当てに妻を毒殺したとみて再逮捕した。
だが、この時点では確たる証拠はなかった。
後の捜査で神谷が猛毒を持つことで知られるトリカブトを大量に購入していたことが判明。また、変死したRさんについて精密検査を行ったところ、血液からトリカブトに含まれるアコニチン、フグ毒に含まれるメサコニチンも検出された。そして、クサフグを購入していたことや生前神谷が利佐子さんに栄養剤のカプセルを飲ませていた事があきらかになった。
だが、これらはあくまで状況証拠であり、公判で神谷も疑惑を否定。トリカブトは観賞用、フグは研究用で購入したもので、「トリカブトの毒は即効性で、自分と離れていた時に死亡したのだからアリバイがある」と主張。事件は検察のでっち上げだとして、神谷は無実を訴える書籍も出版した。
だが、検死医はトリカブトの毒とフグ毒を混合することで毒の効力を送らせることができることを突き止めた。
その後論告求刑公判が行われ、2002年に最高裁で無期懲役が確定している。
(田中尚 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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